学校一のイケメンと噂の先輩は、優しい吸血鬼でした
その1週間後。
「久しぶり、秦野ちゃん。」
本当に何事もなかったかのように、先輩が私の教室までやってきた。
「先輩!無事だったんですね。」
「もちろん。」
「よかった…。」
「秦野ちゃんは?元気だった?」
「はい、元気ですよ。」
「誰かに何かされたりしてない?」
「大丈夫です。
先輩のこと聞かれたりはしましたけど。」
「それは知ってても言えないよね〜。」
「家の事、もう大丈夫なんですか?」
「んー、秦野ちゃんに会いたくてとりあえず親父ぶっ飛ばして戻ってきたから、大丈夫になったわけではない気がするけど、とりあえず大丈夫。」
周りに人がいるからか、小声でそっと教えてくれる。
「それはなかなか過激な……。」
「でも久々に秦野ちゃんの顔が見れてよかった。」
「私も先輩が元気でいてくれてよかったです。」
「…秦野ちゃんが秦野ちゃんで安心する〜。
やっぱり俺、秦野ちゃんが好きだな。」
「またそういうことをこういうところで…。」
「もうみんな知ってるしいいじゃん?
あ、それで思い出した。はい、これ。」
先輩は見覚えのある小瓶を私にくれる。
「お守りですか?」
「うん。
今回みたいな目にはもう遭わなくて済むように気をつけるけど、いつでも助けに行けるように、やっぱり持ってて欲しいなって。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「あとこれも。」
今度は小さい巾着を渡される。中身はサラサラした砂のようなものだった。
「なんですか?これ。」
「俺の血が混ざってるから、吸血鬼が血で武器とか作ってきた時とか、前みたいに血含んでるものにかけたらいいよ。
本当は大量に俺の血を渡すのが1番いいけど、そんなの秦野ちゃんが持ち運びに困るもんね。」
小声で話してはいるけど、周りに聞こえてないか心配。
まあみんな遠巻きにみてるから大丈夫だとは思うけど。
それにしても、度々血に飢えているところをみたけど、先輩は私の心配をしてばかりで、こんなに自分の血を分けちゃっていいんだろうか。
先輩のお父さんだと思われるあの人の口ぶり的に、吸血鬼の血ってすごく大切なもののように思われたけど。