学校一のイケメンと噂の先輩は、優しい吸血鬼でした
あの日、課題を終えてもう一度行った時には、既にあの人の姿はなく、無事先生から頼まれた仕事を終えることが出来た。
んだけども、その2日後の今、私のクラスの教室の入口、私のことを呼ぶクラスメイトの隣には、例の人物が立っている。
できればもう一生お目にかかりたくないと思っていたのに。
その人が眉目秀麗である故に沸き立っている周囲とは裏腹に、私の心は恐怖と焦りと疑問とでぐちゃぐちゃだった。
「…あの、どちら様ですか?私になんの用でしょうか。」
腕を伸ばしてもギリギリ届かないであろう距離までその人に近づいて、私はなんとか尋ねた。
「3年の城山 奏っていいます。秦野 芽衣ちゃん。」
「なんで名前を…。」
「さっき秦野ちゃんを呼んでくれた子に聞いた〜。
ちょっと内緒の話あるんだけど、少しだけ時間いいかな?」
やばい。あんな場面を目撃してしまったし、もしかしたら殺されるんじゃないだろうか。
忘れたフリをするしかない。
「内緒の話、とは……?」
「2日前?くらいかな。俺のこと覚えてない?」
「…ちょっと記憶にないですね。」
「えー、ほんと?
俺は君のこと記憶にあるんだけどな。あのときの反応、可愛かったし。」
「可愛い要素なんて1ミリも……、あ。」
これじゃあ覚えてるって言っているようなものだ。
私はバカなのかもしれない。
「引っかかった〜。
ねぇ、誰にも言ってないよね?あの日のこと。」
「それはもちろん!誰にも言ってません!」
「よかった。
秦野ちゃんいい子そうだし、約束してくれるだけでいいや。これからも誰にも言わないでね。」
「はい、もちろん!」
「ありがとう。じゃあね〜。」
ヒラヒラと笑顔で手を振って去っていく城山先輩。
約束してくれる“だけで”って、本当は何をする気だったんだろう……。考えただけでも恐ろしい…。