恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜

33話

 それを嘲笑うかのように別荘に届いた、妹からの贈り物。お祖母様は届いたものを見てため息を一つ。アオとシュシュは目を細め……私は"またか"とあきれた。

 届いたのは……お祖母様が言っていた毒にまみれたドレス。デザインもかなり斬新な、フリフリレースとリボンが多く、今のカサンドラにはサイズもあわないドレスと、それに合わせた宝飾品。

「フゥ、宝飾品、ドレスのデザインはともかく、品はいいのよね」
 
「はい、王都で有名なデザイナーの作品です。宝飾品も良い石を使用しております」

 ピンクに青、黄色……カラフルな色を使っている、これを着こなせる令嬢はいないわね。

(リボン、フリルを減らせば着れるかしら?)

 その前に解毒しないといけないのだけど。

「これがか、有名?」

 アオは顔をひきつらせ。
 お祖母様は困り顔。

「カサンドラ、シュシュのいう通り、品はいいが……まったく、あの子は懲りないねぇ」

 と、杖を振り、お祖母様が魔法で解毒してくださった。



 妹、シャリィからのドレスは舞踏会に間に合うよう、シュシュが直してくれることになった。夢見が悪いと言っていたカサンドラだったが、あの後から普通に過ごしている。

 庭のスルールの低木にやって来たキリリと話をして、魔法の訓練にも励み、薬草と毒草の勉強も欠かさず行なっていた。

「早く、冒険に出たいわ」
「はい、スライムが見たいです」

「そうだな」

 みんなもカサンドラの夢が落ち着いたと、勘違いするほど。だが、カサンドラが王妃教育を長年受け、貴族の令嬢だと言うことを忘れていた。


 明け方――カサンドラの部屋から悲鳴が上がった。


「「いやぁ――――私は絶対にそうならないわ!!!」」


 隣のシュシュとその隣アオ、離れのお祖母様はカサンドラの寝室の前に集まり、扉を叩いたが。中からは先程度は打って変わって、落ち着いたカサンドラの声が返ってきた。

「お祖母様、シュシュ、アオ……起こしてしまって、ごめんなさい。私、なんだか……寝ぼけたみたいですわ」

 3人は扉の前で息を吸った。

「ふ、ふわぁ、私、まだ寝ますわ……皆さんも部屋に戻ってお眠りください……おやすみなさいませ」
 
 耳が良い、獣人のアオには寝室の中から何が聞こえたのだろう。彼はカサンドラの寝室の扉のノブを握った。

「クソッ、全く気付かなかった……いつものドラに戻ったと思った、オレはバカだ!」

 いきなり音をあげて、開けられたカサンドラの寝室。
 薄暗い天蓋付きベッドの上で涙を流して、カタカタ震え、自分の体を抱きしめるドラがいた。
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