恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜

36話

 アオと約束をした二日後、カサンドラ達はカーシン国へと来ていた。前に約束していたモンスターのスライムを見るためだ。


 
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 カサンドラは貴族令嬢たちが「今度、カサンドラ様をわたしのお茶会に呼びますわ」と、何度か誘われたことがあった。しかし、期待したカサンドラの元にその令嬢達から、招待状が来たことは一度もなかった。
 
 だから、夢に怖がるカサンドラを落ち着かせる、アオの優しさからくる口約束だと思っていた。だが、アオはカサンドラ達が知らないうちに、魔女のお祖母様に頼んでスズに手紙を送り。パン屋の休みを聞いて冒険の日程を決めてくれていた。

 翌日のお昼過ぎ、シュシュは洗濯物の取り込みで、カサンドラはテラスでゆったり読書していた。このお昼過ぎの時間はお昼寝中のはずの、アオが嬉しそうにテラスへと走ってくる。

 そして。

「カサンドラ、明日はカーシン国で冒険だ!」

 と告げた。

「え? ぼ、冒険?」

「なんだよ、この前スライムが見たいって言ってたろ? 急だけど、スズと話して明日に決まった!」

 アオが言っていたことは口約束じゃなかった。
 カサンドラは本を閉じると、大喜びで洗濯物中のシュシュを呼んだ。

「シュシュ、今から買い物に行くわよ!」
「どうしました? ドラお嬢様?」

「明日は冒険よ!」

 と、前日は慌ただしく準備に追われた。全てを知っていたお祖母様は「楽しそうだね」と、知らないふりをしながら笑っていらした。
 カサンドラはそのお祖母様に、二、三日冒険へと行ってきますと伝えて、キリリのこと別荘のことをお願いした。

「わかった、気をつけて行くんだよ」
「はい!」

 そして、何かあっときのためにお祖母様はご自身の使い魔を呼べる、魔導具の笛をカサンドラに貸してくださった。

 

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 翌日の早朝。昼食用のバスケットと、髪をアップにして乗馬服を着て同じナイフを持つカサンドラとシュシュは、アオが操る荷馬車で隣国カーシン国のスズのパン屋まで来たのだ。

 2人はずっと道中。

「シュシュ、スライムが見れますわ」
「ドラお嬢様、楽しみです」

 と、ウキウキしていた。

 前冒険に来たとき、アオは危ないからとカサンドラ達に詳しく、冒険者ギルドの事を詳しく説明をしていなかった。なんでもレベル1の冒険者が、冒険者ギルドで討伐クエストを受けるためには、レベルの高い冒険者とパーティーを組めばいいらしい。

「アオ君」
 
「怒るなよ、ちょー初心者のドラとシュシュに言うわけないだろう! それにオレ1人じゃ、討伐クエストは無理だったし」

 アオ1人で、レベル1のカサンドラとシュシュを討伐クエストに連れて行くのは無理だった。だけど、今日はスズとチロちゃんがいる。チロちゃんはカサンドラ達よりもレベルが高く――彼女はレベル5だと言った。

「チロちゃんは私達の先輩、冒険者ですわ」
「チロ先輩、よろしくお願いします」

「フフ、チロに任せなさい」

「こらチロ、カサンドラ様達にそんな態度をとってはダメだよ」 
「チロ、あなたって子は……」

 屋敷は追い出されたけど……カサンドラがまだ公爵令嬢だと知ったスズパパと、元気なったユズママはチロに失礼のないようにと注意する。

 だけど、カサンドラは。

「あら? 今日はレベル1の冒険者のカサンドラですので、普通でお願いしますわ」

「しかし……」

「スズ、ユズ、ドラがそう言ってるから、普通にしてやってくれ」

「そうですが……わかりました。では冒険者ギルドでクエストを受けて向かいましょう」

「あなた、チロよろしくね。みなさん、お気を付けて行ってきてください」

 お留守番のユズママに「いってきます」と手を振り、カサンドラ達は冒険者ギルドに、スライム討伐のクエストを受けに向かった。

 冒険者ギルドには、この前アオにからんでいた獣人パーティーがいたが、今日はスズが居たからか彼らは近寄って来なかった。
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