【短編】Love Love Love……
 




「………っ!」

 壁の向こうから、聞こえる言葉を聞いて。

 窓ごしに、ウルジュワーンが殴られる所を見た、マリーは。

 緑色の瞳に、あふれ出るほど、溜まった涙をぐぃ、と拭いた。

 そして。

 食堂の奥から、ホコリをかぶった小銃をつかんで、走る。

「しすたー!
 いったら、だめだよ!」

 マリーが扉を開ける寸前。

 食卓の下で。

 スィビャーを抱きしめていたアフダルが、マリーのスカートの裾を引っ張って止めた。

「離して、アフダル!
 でないと、でないとウルジュワーンが………!」




 殺されてしまう。





 聖書を読む、穏やかな声が好きだった。


 傷だらけの顔をほころばせて笑う顔が、愛しかった。


 ウルジュワーンが、こんなところで、死んでしまっていいわけがなかった。


 マリーの必死の声に、アフダルは、頑固に首を振った。

「しすたーは、だめだよ。
 みんなを、まもらなくちゃ」

「でも!」

 叫ぶマリーに、アフダルは、にこっと笑った。

「……ぼくが、いく」

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