妹に婚約者を奪われた私は、呪われた忌子王子様の元へ

出会い

 ティアリーゼが湯浴みを終えると、その身体と髪をエマが乾かし、着替えも手伝ってくれた。

 持ってきてくれたのは、デコルテに繊細なレースがあしらわれた、ラッフルフリルの上質な空色のドレス。
 ティアリーゼの支度が終わりると、再びレイヴンがやってきた。

「よけしければ、城内と庭園をご案内させて頂こうと思っております」
「お願い出来ますでしょうか?」
「畏まりました。そういえば……現在ユリウス様は庭園にいらっしゃいます。ご案内させて頂くついでに、ユリウス様へお会いになられますか?」
「お、お願いします」

(ついで……?ユリウス殿下にお会いするついでに庭園を案内してくれるのではなく、ユリウス殿下の方がついで?)

「本来なら、ユリウス様には身なりを整えて頂いてから、改めてティアリーゼ様とお会いして頂こうと思っていたのですが……」

(なるほど……わたしは気にしないけれど、王子様は衣装替えをしない訳にはいかないわよね……)

「今からご案内させて頂く庭園にいらっしゃいますので、ユリウス様を無視してお声を掛けないというのは、不自然かと思いまして」

 微妙な言葉の言い回しに違和感があったが、にこりと微笑むレイヴンへ、ティアリーゼが疑問を口にすることはなかった。

 レイヴンに案内され、ティアリーゼは庭園へとやってきた。
 雪の降り積もる庭園に訪れたティアリーゼは、すぐにその人物に気付いた。
 陽の光の下、青年と思しき男性の銀糸の髪がキラキラと光輝いている。通った鼻梁に形の良い輪郭や唇を見るに、きっと大層な美形なのだろう。
 彼の容姿が形容し難いのは、顔の上半分を覆う仮面のせいである。

(もしかしなくても彼がユリウス殿下?……仮面をしているのは、やはり隠された王子だから……)

 王族として産まれたにも関わらず、領主としてこの地へ封じられ、出生を隠された悲劇の王子。隠された王族とあって、仮面を着ける生活を強いられているのかもしれない。ティアリーゼは思案していた。
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