いつどこで誰が何をした
10月30日
翌日


今日は天気が悪い。
朝から空も暗いしどんよりした空気。
傘持ってくか…
まだ降ってこそいないが、雨特有の匂いが鼻を刺した。

予想通り祐樹に殴られた場所は痣になっていた。
もー僕の平凡な顔に平凡じゃない痣がぁ。
鏡を見て項垂れる。
ついでにキーンと耳鳴りまでしてきて、今日は悲しいほど絶不調だ。

今日は指名されませんように。
そんなことを考えながら通学路へと進んだ。



校門の前の役立たずスーツ連中を通り過ぎて教室へ着くと、不穏な空気とざわめきが広がっていた。
「ひかるさん…」
「おはよう久遠さん。みんな落ち着かないね」
「昨夜のメッセージのことで…」
ああ。

「身代わり制度ってなんだよ」

やっぱりその話題で持ちきりだった。
そりゃそうだ。ゲームの動きが変わったんだ。みんな動揺する。


「書いてあった通りだよ。指名されても誰かが代わりに実行することができる」
片桐が腕を組んで言う。
「そんなの自ら名乗り出る奴いんのかよ」
檜山がイライラしている。
「得意なことだったりしたら協力できるよね」
杉山が呟くが
「でも失敗したらそいつも元のやつも両方死ぬんだぞ?リスクが高すぎる」

うん…確かに。
あんまりこの制度を入れたメリットがわからない。
率先して使う奴なんていないだろ。
代わってもらったところで失敗したら自分も死ぬんだ。

犯人がこれを入れた意味はなんだ。
単にゲームを複雑にしたかったから?
それとも何かの準備段階?

「まあ…身代わり制度についてはその時指名された人がよく考えて使うしかないな。使わなくていいならなるべくそうした方がいいと思うけど」
片桐が言った。


「…昨日の辻原の件はこの身代わり制度が導入されるためのイベントだったんだよ。ゲームでもよくあるだろ?新しいルールやステージが追加される前に起こるイベント。言い方は良くないけど」
枕崎が静かに言った。

「ルールは変わってくってことね」
柿田が深いため息をついた。
「もう私嫌だよ…」
三谷が机に突っ伏す。


クラスメイトは限界だ。
こんな状況で登校できているだけでもすごい。
警察は使えないし、解決策のかけらも見つかってない…
昨日の中村のように壊れてしまう人が出てきても不思議じゃない。

ああ、そうだ、中村は?

中村の席は空席。
それ以外の生徒はみんな来ている。
やっぱり…返信しなかったんだろうな。

まあ彼女は遅かれ早かれ自滅していただろう。
野々村が死んで精神的にかなり不安定だった。
非協力的なやつが生き残っていたって役には立たない。これでよかったんだ。


悪いね、中村。
恨むなら僕じゃなくて犯人にしてよね。
僕は自分のしたことを悪いとは思ってないよ。



取捨選択は大事だ。
優しいだけの人間は必ず損をする。

うまく生きていくために、時には残酷な選択も必要だ。みんなが幸せになるなんてことは不可能だし、そんな世界バランスが悪くてすぐに壊れる。
ある程度自己中でないと人間らしくない。
だから、自分の糧にならない物は早めに切り捨てるべき。

そう、昔誰かに教えられたんだ。


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