いつどこで誰が何をした
僕と東坡は帰る方向が一緒なので成り行きで隣を歩いていた。
「…ひかる」
?
「本当に、このゲームはやらなきゃ死ぬのか」
「そうだろうね」
間髪入れずに答えた。
「僕らには死ぬかプレイするかのどっちかしか選択肢はないよ」
これはゲームなんだ。
「生き残るにはゲームの攻略法を見つけないと」
「攻略法か…内容を決めてるのは俺らの返信なんだよな」
「憶測だけどね。でももしそうなら色々と厄介なことになる」
「なんで?」
もし完全ランダムだとしたら、このゲームは明らかに難しい。
実際の『いつどこで誰が何をした』はそれぞれの単語を別の人物が考えて、ありえない文章が出来たりして、それを面白おかしく評価するってだけのシンプルなゲームだ。
でも、もしそれを実行するとなると
ありえない文章なんかになったら困るのは僕らだ。
今までの内容は
『放課後 体育館で 佐滝が バスケした』
これは普通にできる内容だった。
『正午 保健室で 野々村が 逆立ちした』
これもそうだ、不可能な内容じゃない。
まあできなかったけど…
『今日 学校で 梅原が 殴った』
これもできた。
今までのはやろうと思えばできるレベルのものだった。
ただ、それではこのゲームの面白みがない。
このゲームの楽しみ方はありえない文章ができることだ。
もし…時間、場所、何をしたの組み合わせが簡単にできるものじゃなければ…
メッセージが来た時点で死が確定する。
逃げ道はない。
「簡単にできるものじゃないって…例えば?」
「非現実的なことだよ。単語自体は簡単だったとしても組み合わせ方によっては不可能になる。
そしてもしその時に指名されていれば、確実に死ぬ」
「…確実」
このゲームは僕たちにとって不利すぎる。
犯人はおそらくこのゲームを通して僕らを殺すつもりなんだろう。全員…
「全員って…なんでだよ」
「そんなこと知らないよ。でもきっと、生き残ることは簡単じゃないと思う。ゲームの終わらせ方が分からないんだから」
「…そんな」
「生き残るためには…ゲームの攻略法を見つけてプレイするか、犯人を見つけるかのどちらかしかない」
でも高校生の僕らに犯人探しなんてとてもじゃないけどできない。
僕らにはこのゲームに参加する以外に道はない。
強く握りしめた拳。
爪が手のひらに食い込む。痛みが表情を抑制する。
心臓がどくどくと激しく波打っている。
退屈な日常はもう果てに行ってしまった。