初めての恋はあなたとしたい

繋がる未来

「お疲れ様」

私が仕事の後にメッセージを送るとすでに近くにおり、駐車場で待っていると言われた。
私はなんだか緊張しながら拓巳くんの待つ駐車場へ向かった。
黒のいつもの車が見えてくると嬉しいはずなのに、胃が痛くなるような緊張感もあり足の運びが遅くなる。
サイドミラーに私が映っていたのか、なかなか近くに来ない私に気がつき拓巳くんが車から降りてきた。
私に近づくと頭をそっと撫でられた。

「遅くなってごめん」

その言葉と温かい手に涙が浮かぶ。頭を上げられずに俯いていると、そっと抱きしめられた。

「心配かけてごめん」

ふわっと香る彼の匂いが鼻をくすぐる。
固まり切った私の心も体も緩むのがわかる。思わず彼のジャケットを握りしめた。

「待ってた」

その一言しか出てこなかった。
しばらく言葉もないままに抱きしめられていたが、その無言さえ心地いい。頭の上に唇が重ねられたのを感じた。

「ごめん」

口数少なく頭の上から聞こえる彼の声はなんだかとても甘く、切なく、耳の奥がジーンとする。私のそばにいると実感させてくれる。
彼のジャケットを掴む力が少しだけ強くなる。

「好き……」

彼に届くか届かないかわからない。
でも、どうしても今言いたくなった。
するとぎゅっと抱きしめられる力が強くなる。背の高い彼に、包み込まれるように抱きしめられると頭上からさらに甘い言葉が降ってきた。

「俺も好きだ。何よりも美花を愛してる」

「うん」

今までずっと好きだった。
この恋に何度ふたをしようか悩んだことは一度や二度ではない。ただ、彼のそばにいられたら、彼の役に立てたらと思っていた。彼から求められるなんて考えてみなかった。

でも……

こんなに幸せな気持ちになれるんだと実感した。
私だけが彼を好きでいたんじゃなかった。拓巳くんも私を妹としてではなく、ひとりの女性として見てくれるんだと心の底から嬉しい。

「美花……」

耳をくすぐる彼の甘い声が私の名前を紡ぐ。
少しだけ顔を上げると、彼の顔が近づいてきて、あっという間に距離は無くなった。気がついた時には彼の唇が重なっていた。
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