初めての恋はあなたとしたい
仕事を初めて半年。
久しぶりにお兄ちゃんに誘われ外食するとこになった。たっくんも来ると言われ、あまりの嬉しさに朝からテンションが上がる。
何を着て行こう、とクローゼットの中をかき回しているがなかなか決まらない。
夜は少し涼しくなってきているし羽織るものが必要だろう。仕事ならジャケットを着るが、ちょっと違う気がする。でもお兄ちゃんやたっくんがいるなら少し大人びた服がいいのではないかと考えこんでしまう。
結局シンプルなグリーンのワンピースにネイビーのカーディガンを手に持ち、白いバッグに決めた。

「美花ー、そろそろ行けるか?」

廊下からお兄ちゃんの声が聞こえてきた。

「うん、今行く」

慌ててお兄ちゃんから就職祝いにもらったダイヤとパールのピアスをつけると部屋から出た。

お兄ちゃんに連れられて行ったのは、今まで行ったこともないようなホテルの高層階にあるレストランだった。

「すごい」

夕焼け空がとても綺麗で、テーブルに案内されるが窓から目が離せない。
黄色からオレンジへと変化していき、徐々に空が赤く変化していく。

「マジックアワーって言うんだ」

その声に振り返ると、カジュアルなジャケットにスリムな黒のパンツを履くたっくんがいた。

「よぉ」

お兄ちゃんが声をかけると軽く手を上げ、私の向かいの席についた。
今日はプライベートだからかお兄ちゃんの口調は砕けている。会社では副社長と一社員。どうしているのか聞いたらTPOに合わせて敬語を使っていると言っていた。
でも今日のふたりの雰囲気を見ると幼馴染のままでどこかホッとした。
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