君がくれた無垢な愛を僕は今日も抱きしめる
「お手洗い行ってもいいですか?」

「じゃあ俺も行ってくるね。少し時間がかかるかもしれないけど……」

「了解です。ここで待ち合わせしましょう」

陽茉莉がトイレに入ると少し混んでいて、もしかして亮平を待たせてしまうかもと思って超特急で身なりを整えて外に出たけれど、そこに亮平の姿はなかった。

念のため多目的トイレの開閉ロックを確認してみれば赤く「閉」の表示がされていて、ほうっと安堵する。同時に介助なしでも大丈夫だろうかと心配にもなった。

亮平からは何も言われていない。亮平がなぜ車椅子なのか明確な理由は聞いていないし詮索するつもりもないけれど、陽茉莉が手伝えることがあるなら何でもやってあげたい、そんな気持ちだった。

待つのは苦にならないけれど、亮平が出来ること出来ないことくらいは把握しておきたい。そうじゃないと時間がかかることが普通なのか、亮平が困っているのか判断つかないからだ。

「……なんか私、亮平さんのことばっかり考えてる」

車椅子を押しながら梅が綺麗だねとたわいもない話をするのはとても楽しい。まだ半日しか経っていないけれど、もう半日も経ってしまっている。時間の流れが早い。

「亮平さんのこと、もっともっと知りたいな」

陽茉莉は梅の花を眺めながらポツリと呟いた。
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