押してだめなら灰になる!!
だって私の身体,もう動いてる。

それに気付くのは,正面から私の動きを見ていた2人だけ。

血夜くんに驚きながらも,私が取り出したものから目を離せないでいる。

無言でくるくると蓋を素早く開けると,2人は目を丸くした。

そして折角開いた瞳を,閉じてしまう。

ーーパシャッッ

店内には異様な音。

異変に気付き会話を止めた人もいて。

そんなお客さんには悪いけど,止められなかった。



「え……あんた,なにしてんの?」



呆けたような,気味の悪いような声色。

私ははっと笑う。



「何って? 私が他人に水なんかかけられるわけないでしょ? だから,ちゃんと見て。ほんとはこうしてあげたかったんだから」 



ぽたぽたと水が落ちた。

毎日買ってる,水のペットボトル。

ほとんど飲んでいなかったせいで,最初の振りかけた1発以外はごぽごぽと私を水浸しにしていた。



「私が! 血夜くんといたから何? 血夜くんの気持ちが何? 関係ないでしょ。誰だか知らないけど,ほんとは気に入らないの,そんなことじゃないんでしょ」



ただ文句言いたかっただけ。

自分に順番が来るかもって,思っただけなんでしょう。

血夜くんの近くにいる私が気に入らないのはほんとかもしれないけど,血夜くんの気持ちなんてどうだっていいんでしょ。
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