「あなたが運命の人を見つける前に、思い出をください」と一夜を共にした翌朝、私が彼の番なことが判明しました ~白銀の狼公爵の、一途すぎる溺愛~
 痛みはない、大丈夫、と答えるべき場面だったのかもしれないが、今のルイスに、そんな気遣いをする余裕はなく。
 正直に、腰が痛いと言ってしまった。

「そうか……。すまなかった」
「ひゃあ!?」

 グレンが労わるようにルイスの腰をさするものだから、彼女からはあられもない声があがる。
 昨夜のあれそれといい、今の状況といい。ルイスはもう、限界だった。
 もはやグレンの顔を見ることができないし、自分の顔も彼に見せることができない。
 ルイスは両手で顔を覆い、ぷるぷると震える。
 グレンからすれば、今のルイスは、部屋のすみっこで震える小動物のようだった。

「……可愛い」

 グレンの逞しい腕に抱き寄せられ、髪や額に何度もキスを落とされて。
 相手が当然のように触れてくるものだから、ルイスは余計にぐるんぐるんになってしまう。
 ルイスには、今のグレンの状態がよくわからない。
 グレンはこれまで、ルイスにこんなふうに触れることはなかった。
 それも当然だ。自分たちは貴族で、婚約者でもなんでもない。グレンに至っては、筆頭公爵家の嫡男だ。
 様々な問題が発生するため、貴族の令嬢と気軽に性的な接触をすることはできない。
 それが、一夜をともにした途端にこれである。
 ルイスは、「身体の関係を持つと、男性ってみんなこうなるのかしら!?」なんて思ったりもした。

 グレンは愛おしそうにルイスを撫でたりキスを落としたりし続けており、離してもらえそうにない。
 ルイスは彼の愛を受け入れながらも、どういうことなの、どうすればいいの、と悩んでいた。





「あの、グレン様……?」

 もう、どのくらいそうしていたのだろう。
 流石にそろそろ離してもらえないだろうかと、ルイスはそっと彼の様子を伺う。
 しかしグレンは、ルイスの戸惑いなど気にすることなく、噛みしめるようにこう口にした。

「はあ……可愛い。俺の番、最高に可愛い」
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