【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました
 エアハート子爵家では、グレンはルイスの父に顔面を殴られた。
 俺が殴られるぐらいで済むなら構わないさ、なんて冗談交じりに話していたら、本当にそうなってしまった。

「今このときだけは、無礼をお許しください」
「今の私は、子爵家の当主ではなく、ルイスの父親としてここに立っています」

 との前置きつきの、なかなかの強パンチであった。
 しかし、身体が丈夫で、体幹も強いグレンは、よろつくこともなく、義父となる人の一撃を受けきった。
 婚約前のお泊まりになったのは自分のせいであったため、ルイス、大慌てである。
 グレンが彼女を制さなかったら、自分が悪いのだと本当のことを話してしまっていただろう。
 一発いれる騒動はあったものの、なんだかんだで、エアハート子爵家も、二人の婚約を認め。
 二人は、晴れて正式な婚約者となったのだった。


 番を見つけたグレンは、正式に次期当主へと任命された。
 家を継ぐにあたってグレンに足りないものは、婚約者ぐらいだったのである。
 婚約者――それも、運命の番である――が決定した今、グレンが後継者となることに、なんの障害もなかった。

 そして、筆頭公爵家次期当主の妻となる、子爵家生まれのルイスは。

「アルバーン公爵家の皆様。グレン様の婚約者の、ルイス・エアハートです。これから、よろしくお願いします」

 使用人を含む、アルバーン公爵家の面々の前で、ルイスが深々と頭を下げる。
 婚約から少し経った頃。彼女は、アルバーン公爵邸に移り住むこととなった。
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