【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました
「その……実は私は、お二人にはあまり好かれていないのでは、と思っていたので、正直驚きましたが……。家族、歓迎されている、と聞いて安心しました」

 ルイスの言葉に、ミリィとクラークがはっとする。
 二人はこれまで、ルイスに冷たく接し、無視にも近い態度をとってきた。
 自分は嫌われている。ルイスにそう思わせるには、十分な対応であった。

「ごめんなさい、誤解なのお義姉さまぁ!」
「うん、誤解。そう思わせるようなことをしたのは、こっちだけども」
「私たち、本当は、お義姉さまのことが大好きで……。二人に結婚して欲しいと思っていたの。でも、いつかお兄様が他の女性を番として連れてきたらと思うと、怖くて……」
「兄さんの恋心がきれいさっぱり消えて、他の女性を隣におく。僕たちは獣人だから、そんな未来が来てもおかしくない。だから、あえてルイス義姉さんとは距離をおいていたんだ」

 ミリィとクラークは話す。
 四人で仲良く過ごしていたのに、グレンが番を見つけ、縁が切れてしまったら。
 ルイスを悲しませることになってしまったら。
 ルイスにいて欲しかった場所に、他の女性が立つことになったら。
 恋も愛も番に塗り替えられて、ルイスを忘れる兄の姿を見ることになってしまったら。
 そう思うと、怖くてルイスに近づけなくなってしまったそうだ。
 
 ミリィとクラークも、仲のいい二人が番システムに引き裂かれることを恐れていたのだ。
 番だと判明する前のルイスとグレンが、そうだったように。
 ルイスなど、番システムの恐怖に追い詰められすぎて、無理に彼に関係を迫ったほどである。
 怖いのは、当事者だけではなかったのだ。

「……そう、だったのですね」
「うん。だから、兄さんの番だとわかった今、僕たちがルイス義姉さんを避ける理由はない。大歓迎」
「ルイスお義姉さまが番だとわかって、家族一同大盛り上がりだったのよ! 初恋の君が番だったなんて、獣人にとっては夢のような話……。お兄様、本当によくやりましたわ! ルイスお義姉さま、今までごめんなさい。本当は、こうして『お義姉さま』と呼びたいと、ずっと思っていたの」
「クラーク様、ミリィ様……」
「『様』はいらない」
「ミリィと呼んで、お義姉さま!」
「で、では……」

 こほん、とルイスが咳ばらいをする。

「クラーク。ミリィ。これから、よろしくお願いします」

 ルイスの緑の瞳が、優しく細められる。
 彼らは、小柄で優しい雰囲気のルイスのことが、昔から大好きだった。
 兄の番の、ふわっとした微笑みに。ずっと二人の仲を応援していた弟妹は悶えた。
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