【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました
 エリーゼが、パパとママの次に覚えた言葉は、耳だった。
 初めて「みみ」と話したのは、今のように父に抱っこされていたとき。
 懸命に父の頭に手を伸ばしながら「みみ!」と叫んだものだから、そばにいたルイスは思わず吹き出した。
 どれだけ好きなの、そんなに触りたいの、とルイスの笑いのツボに入ってしまったのである。

「みみ……。パパとママの次が、みみ……。ふふ、ふふふっ……」
「みみ! みみ!」

 お腹を抱えてぷるぷると震える妻。みみ、と叫び続ける娘。
 そんな妻子を前にして、グレンは「きみに似たんじゃないか?」と妻の耳好きを指摘した。
 初めて出会ったときからここまで、ルイスはグレンの狼耳ラブである。
 とはいえ、ルイスだって貴族のご令嬢。
 思春期を迎えたころから婚約までは、グレンに触れることを我慢していた。
 だが、婚約後は今までの時間を取り返すかのように、グレンの耳をもふるようになった。
 エリーゼだって、母が父の耳をもふもふする場面は何度も目にしていたはずだ。
 それもあってか、エリーゼもよくグレンの耳を触りたがる。
 母娘揃って、グレンの狼耳が大好きなのである。
 


 そんなことで、今日もグレンは娘に耳をめちゃくちゃにされている。
 本人は笑っているが、それなりに痛みもあるはずだ。
 ルイスは、思う。
 流石に、触り方を教えるべきではないかと。

「あ、あー……。私もパパのお耳、触りたくなっちゃった。グレン様、私もいいですか?」
「ん? ああ、もちろん」

 二人が触りやすいよう、グレンはソファに横になる。
 エリーゼは、仰向けになった父にまたがって。
 ルイスは、グレンの頭側にまわり、彼の耳を触り始める。

「エリィ、パパのお耳、気持ちいいねえ」

 娘に笑いかけながらも、ルイスは優しく丁寧にグレンの耳に触れてみせる。
 婚約後、グレンの耳を触りまくったルイスは、彼から「もはやマッサージ」「触られると心地いい」とまで言われるようになった。
 ルイスは耳もふ上級者なのである。
 先ほどまでは乱暴に父の耳を引っ張ったりしていたエリーゼも、母の触り方を真似し始める。

「うん。そうそう。そうやって優しく……。痛くないように……」

 妻による、旦那の耳もふりかた指導が続く。
 上から嫁。下から娘。
 最愛の二人に囲まれたグレンは、この上ない幸福を噛み占めていた。
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