竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 エリナをもともと番として遇し、王宮に呼び寄せるなら、あれだけ時間があったのだから、その準備をしてしかるべきだろう。
 少なくとも、クーはそういうことに手を抜くタイプではない、と思う。

 だから、エリナはクーに何か理由があるのでは、と思って――ゆるゆるとかぶりを振った。
 それでも、突然連れてこられたのは事実だから。

 エリナは回廊を少し進み、三つほど部屋を通り過ぎた向こうに見える中庭へと歩を進めた。
 背後に視線を感じる。ダーナだ。エリナの頼み通り一人にしてはくれているのだが、それでも遠くからエリナを見守っている様子がわかった。

 振り返ったエリナは、驚くダーナに手ぶりで「もう大丈夫よ」と伝えた。
 案内が必要かと思っていたのだろう。目的地に着いたのだから大丈夫、という意図を込めると、ダーナはエリナの意思を汲んで頷いてくれた。

 ダーナがエリナの部屋に姿を消す、と同時に、中に数人のメイドが入っていくのが見えた。
 おそらく、今のうちに部屋を整えたり、エリナが汚してしまったシーツを片付けたりするのだろう。
 エリナは人気のなくなったことにほっと胸をなでおろした。
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