竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 フードを被ったその人間は、杖をとん、と地面に突き立てる。
 杖に括りつけられた鐘がまた、からん、と音を立てた。

「……っ」

 鐘の音が響くたび、エリナの視界がぶれる。
 わずかに遠ざかって、膜の掛かったような意識の中、嗄れ声のフードは、遠くから響く、幽鬼のような声で話した。

「不貞の王妃、エリスティナ。あの女も、愚かな女だった」
「――……」
「雛を拾い、そのあげくに死んだ。己を投げ捨てることが美徳だと言わんばかりの、腹立たしい女……民草からどれほどあざけわらわれているかも知らず逝った、馬鹿な女」
「そんな、こと、思ってなかった……」

 エリナは、煙る意識の中、必死でそう返した。
 それが、エリナの生まれ変わりがエリスティナであると、白状したも同義であることには、曇った思考力のせいで気付けなかった。

 エリナの胸がずきずきと痛む。
 かつて貫かれた場所が、あの頃を思い出す。
< 205 / 315 >

この作品をシェア

pagetop