竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
突然背後から聞こえた声に、エリナははじかれたように振り返った。
男とも、女ともつかぬしわがれた声。目深にフードを被った何者かは、しわだらけの指先をタンポポの花壇に向けて、エリナにそちらを見るように促した。
いつの間にそこにいたのだろう。
ここは、竜王の番の領域だ。王宮のこの場所には、召使いたちや兵士は入れるものの、少なくない防衛魔法がかけられている。
第一、どんな道を通ったとしても、誰かの目につくはずだ。
ここは王宮の奥、城のあらゆる入り口からは遠い。
このような怪しい風体の人間が、やすやすと入れるとは到底思えなかった。
身構えるエリナに、フードの人間はからからと笑って見せた。
「思い出の花だからと――わざわざ、このような雑草を育てさせる、酔狂で、愚かな竜王、その番であるお前もまた、馬鹿な女だ」
「な、に……?」