竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 エリナがハンカチをもってその目元を拭ってやると、クーはされるがままに涙を拭かれて。
 けれど、拭うそばから涙があふれてとまらないのだ。

「どうしたの?味付け、苦手だった?」
「ちが、違います」

 クーは、その青年の見た目に似つかわしくない、子供のような仕草でぐいぐいと涙をぬぐった。
 真っ赤な目が緑を隠してもったいない。エリナが恐る恐るその手を取ると、クーはまだ涙を流したまま、笑みを浮かべて言った。

「おいしい、おいしいです……」
「そ、そう……」
「大切なひとが作ってくれたシチューと、同じ味がします」
「ええ?そんな、たいしたものじゃあ、ないと思う、のだけれど」

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