まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー
しなやかな筋肉のついた肉体には、余計な装飾など必要ないと言いたげな、シンプルな薄手の衣を纏い、人好きのする顔は近所のおっちゃんを彷彿とさせる。
「直接儂を呼び出すとは、何者じゃ」
「ご無沙汰しております、オオクニヌシ」
「なんだ、オモイカネか。久しいのお」
快活な若者の声だが、おじいさんのような口調。
チグハグ感が否めないが、神は私よりよほど長寿だ。
そんなこともあるだろう。
気にしないことにした。
「して、何の用じゃ? お前さんのことだから話をするためだけに呼んだわけじゃなかろう」
「話が早くて助かります。こちら、わたくしの主人の月海さん。月海さん、この方は、オオクニヌシです」
「はじめまして、月海です。イカネさんの友人です」
紹介されたので、前髪を横に流してお辞儀した。
友人に少しアクセントをつけるのがポイントだ。
「ほっほっ、ご丁寧にはじめまして」
「用件は、これを直していただきたく」
イカネさんが手のひらで指し示す先。
今なら月明かりではっきり見える。
えぐれた校舎と落ちた瓦礫、水が噴き出す水道管の惨状。
中の備品もやられていそうだ。
「これはまた、派手にやりましたなあ」
「全壊したわけではないので、派手とは言い難いかと……」
思わず言い訳が口をつく。
「建物の修復はお任せくだされ。ただ、それ以外の……書類や物品の紛失を戻すことなどはできませんぞ」
「それは、運が良いことを祈るのみです」
頼みますよ、ツクヨミさん。
「それでは今から修理に入りましょうぞ」
「よろしくお願いします」
オオクニヌシは懐から打ち出の小槌を取り出し、校舎を叩く。
叩いたところから広がるように、欠けた部分が生えてきて、あっという間に綺麗に元通りだ。
「……こんなところじゃろう」
「お見事です」
手品でも見ている気分だった。
遠くに積んである瓦礫はそのままなので、あれは、新しく継ぎ足したものだとわかる。
が、境目がわからないくらいに同化していた。
「仕事も済んだことじゃ。儂は帰るぞ」
「あ、ちょっと待ってください」
「なんじゃ、月海よ」
「これ、ささやかながらお礼です。よければ食べてください」
カバンから出した、お気に入りのマシュマロを差し出す。
「焼いて食べるとより美味しいですよ」
「ほほほ、これはよい。あとでいただこう」
愉快そうに笑うオオクニヌシにマシュマロを受け取ってもらえた。
私は安堵の息をつく。
「さらばじゃ。また何かあれば呼ぶといい」
打ち出の小槌を一振りして、オオクニヌシは消えた。
瓦礫も持っていってくれたようで、隠滅すべき証拠品はなくなった。
ありがたい。
「さて、残るはこの人ですね」
イカネさんの視線の先。
女子生徒の瞼がふるえ、ゆっくり目を開く。
「………あれ、あたし………」
「おはようございます。もしくは、こんばんはの方が良いでしょうか」
彷徨っていた彼女の目が、私に定まる。