まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー



瞬間。



「……………」



目の前を龍が泳ぐ。

サメも泳ぐ。

小魚が渦を巻き、敵を捕える。


霞がかっていた思考、術の使い方がわかるようになった。


この海の底のような青い世界、龍たちは、私が作ったものだ。

私の思うままに動く。



「ぱちん」



指を鳴らせば、龍が大型の妖魔を締め上げて塵にする。

サメの集団も、小さいものから大きなものまで食っていく。

私の創り出した海の仲間たちが妖魔のほとんどを無力化した。



「おい!」



先輩に肩を揺さぶられた。



「正気か!?」



正気って何?



「っ!?」



前髪をあげられて、術が解けた。

青の世界が、龍たちが消える。


先輩のお綺麗な顔が、真正面から近づいてくる。



「ななな、なんっ!?」



「よし、黒いな」



それだけ言って、先輩は残った妖魔退治に飛び出した。



「黒いってなにさ!?」



イケメン先輩の言うことは難解だ。

人の顔見て黒いって。

腹黒?

大魔王な先輩には負けるわ。

日焼け?

あまり外に出た記憶はありませんが。

黒クロくろー苦労?

あれ、私がお荷物だと再確認した?

失礼な!

多分今私、術使えてましたよね!

なんならもういちど………。


剣を通して術を使おうとしても、何も起こらない。

霧のように、掴めなくなってしまった。

先輩が邪魔しなければ、なんとなく掴めたかもしれないのに!


むきーっと内心怒っていると、イカネさんが特大の雷を落として今日の任務は終わった。

さすがイカネさん。

今日も美しい。

先輩が戻ってきて、脚に抱きつくヨモギ君を撫でる。



「ご主人様、オレがんばった!」



ほめてとばかりにふかふかの尻尾が揺れる。



「強くなったな、ヨモギ」



「えへへー」



「それに比べて………」



先輩の冷たい視線が私に刺さる。



「………ハイ、スミマセン」



「…………いや、お前はよくやった方だ。褒めてやる」



どうしてこう、上から目線なのか。



「………ははー、ありがたきしあわせ」



恭しく頭を下げると、先輩はその頭を撫でてきた。

こら、やめなさい。

私はヨモギ君じゃありません。



「月海さん、口が笑ってますよ」



イカネさんに指摘されて、顔を引き締める。


不覚。

別に、先輩に褒められても、嬉しくもなんともないんだから。

ほら、その、ドヤァって顔がムカつくんですよ。



「生きてるんですから、次があります」



「次こそは、やったりますよ!」



微笑んでくれるイカネさんに決意表明した。


人知れず、人の為に戦うのだ。

誰に褒められるでもないけれど、褒められたら嬉しいのだ。

ただ、自分はやってやったと、自信を持って言えるようになれば、もっと嬉しい。


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