まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー

その歌声を聴いた者は破滅する



噴水が収まり、地面に足をつける。


こっ、わ、かった………。


不安定なはずの水の足場で、高いところから見下ろすなんて。

膝が笑って、少しでも力を抜いたら座り込んでしまうよ。



「ははっ、ひっひいぃぃぃっ!」



どこがツボに入ったのか。

大笑いしている先輩を睨みつける。


くそっ、他人事だと思ってっ……!


当事者のツクヨミノミコトもスサノオノミコトも満足そうに引っ込んでるし。

半壊した屋敷と屋敷下の大穴は君たちのせいだからね。

誇らしそうにしないで。



『月海はわがままだねぇ』



『……………うむ』



『助けてくれてありがとう! だけどもっと別の方法はなかったのかな……』



『力を誇示する良い機会だよっ』



『……………うむ』



『このやろう……』



「君……」



四十歳前半くらいの男性が進み出る。



「我が屋敷を壊したのは、君か?」



話の内容的に、彼は神水流家の当主だ。

先輩もさすがに笑うのをやめた。

しかしそれだけだ。

気配を消して、他人のふり。


おい、助けに来てよ。


目で訴えても、仮面の下の表情など気づかないふり。

バイバイって手を振って後退しないで。

熊とご対面した時じゃないんだからさぁ。

てか、先輩なら熊もぶっ飛ばすでしょ。

てへっ、て舌を出されても、可愛いから許すってならないのよ。

ふてぶてしさに怒りしか湧かない。


………だめだ、先輩は助けてくれる気なんてさらさらない。

なんとか自力で切り抜けないと。


私は目の前の人物を極力刺激しないように、笑顔を作った。

口を開こうとした時、後ろの大穴からイカネさんが浮き上がり、私の前にふわりと着地する。



「わたくしも、お伺いしたいことがあります」



救いの女神がご降臨なされた。



「あちらをご覧ください」



イカネさんの手が指し示す先。

水の柱が抉った大穴から、地下施設にいた皆が地上に出てくるところだった。



「なっ、なぜ……!」



神水流当主は顔色を悪くする。

ひた隠してきた暗部を、公衆の面前に晒されたのだ。

ヨモギ君とマシロ君を先頭に、ヨモギ母、実験動物達と続く。

行儀良く整列し、最後に、研究員の首輪に繋がる鎖を握る響が出てきた。



「響、貴様……!」



「当主様、お助け……」



「伏せ」



研究員が逃げ出そうとするのを、鎖を引いて制する。

鎖を持つ者の命令に従い、研究員は地に臥した。

五家の他の当主達、次期当主達や、部下の皆、討ち入ってきた鬼たちまで、こちらの動向に注視する。



「神水流家当主殿。彼らは、この屋敷地下にある、牢で見つけたもの。納得のいく説明を」



イカネさんが再度問う。


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