まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー


「わ、我は知らぬ! そこの奴が勝手にやっていたことだ!」



「当主様……!」



研究員は伏せたまま、顔を絶望の色に染める。



「我々は、当主様の命令で……!」



「黙っておれ。この裏切り者が!」



「そうなのかい? そこの神水流の者よ」



別の家の当主が、近くにいる下っ端に問いかける。

彼らの目配せは一瞬だった。



「全ては、当主様の命令です!」



「当主様の命令により、あやかしを捕らえておりました!」



「捕らえたあやかしを解剖したり、実験したり、新たな薬を開発したり、全ては当主様の命令です!」



口々に現状を訴える。

保身で当主を売った者もいるだろう。

遠くの方では、安堵の顔を見せる者もいた。

不本意な者にとっては希望だったのかもしれない。



「どいつもこいつも!」



顔を赤くして怒りに震える神水流家当主。

彼の態度で、下っ端の言うことは真実であるとわかる。

実験動物達は、恨みある神水流家の者を威嚇しながらも、飛びかかることはしなかった。

ヨモギ君がしっかり手綱を握っている。

マシュマロの効果、すごいな。

神水流家当主は、吹っ切れたように笑いだした。



「実験、素晴らしいではないか! 妖魔どもを捕らえ、日々研究し、奴らの弱点を暴いた! そして、より効果的な討伐の方法を見つけたのだ! 我々神水流家のもつ情報を欲した貴様らに、我の行動を罰する資格はない!」



堂々と宣言する神水流当主に、押し黙る人間達。

そこにイカネさんが、ため息をつきながら介入した。



「そこまでなら、文句はありません。病気に対する薬を開発するのが誉められるのと同じこと。囚われたものに同情こそすれ、敵対するのであれば誰しもが行っていること。問題は、その先。混ぜられて、人工的に作られたものについて、お聞かせ願いたい」



「なんのこと……」



「彼らについて、ですよ」



ヨモギ君の指示により、進み出る彼ら。

ワニの頭、犬の体、鳥の羽、蠍の尻尾。

兎の頭、馬の体、蝙蝠の羽、鼠の尻尾。

獅子の頭、蛇の体、蜘蛛の足。

亀の甲羅から生える8本の蛇の首。

鶏の尾が3匹の蛇の頭。

他、無数の証拠は目の前にある。



「それは、勝手に発生したのだ。我は関知していない。いやはや、生物の進化には驚かされるよ」



なおも言い逃れを続ける神水流当主。

イカネさんは私の持つ資料をペラペラめくる。



「こちらの資料には、制作から販売にいたるまでのマニュアルもございます」



途端に沸き出す他家当主たち。



「なんと!」



「神水流よ、それはまことか!」



「もう言い逃れはできませんな」



「ふははっ! おとなしく罪を認めよ!」



火宮当主は嬉々として言う。

追及の標的が変わって嬉しいんだね。



「役立たずども……余計なものを残しおって………」



神水流当主は懐から小瓶を取り出し、一気にあおった。



「皆殺しにしてやる!」



唸るように言葉を発した瞬間、神水流当主の霊力が爆発的に上昇。

彼を中心に起こる強風が、周囲のものを吹き飛ばす。

< 68 / 90 >

この作品をシェア

pagetop