まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー

命の保証はするからさ



「そんじゃ、こいつは俺が貰っていく」



先輩はマシロ君と手を繋ぐ。

二度と離してなるものかと気合の入った鬼の怪力に潰されぬよう、先輩の手は霊力で強化されていた。

その拳をふるう事があれば、コンクリートさえ軽く粉砕するだろう。



「賭けは俺の勝ちだろう。当然の権利だと思うが」



「そんなの認められるか!」



「賭けは無効だ!」



「仕方ない。じゃあ、もう一度ころ……」



先輩が霊力をまとわせ硬い拳を握ると、途端に彼らの勢いが落ちた。



「今回だけだ!」



「ご理解いただけたようで」



『初めからそう言えばいいんだよ!』



さっきもやったなぁ、このやりとり。

これが学習しないというやつか。

勉強になります。



「では、こちらを」



「ああ」



イカネさんが先輩に渡したのは、ヨモギ君と契約する時に使ったものと同じ効果のお札。

先輩は迷うことなくそれを使った。



「我、汝との契約を所望す。名乗れ」



「………マシロ」



マシロ君の身体がほんのり光って、すぐにおさまる。

契約は成立した。

彼らの目の前で契約することにより、所有権を明らかにしたのだ。



「用は済んだ。帰るぞ」



「待って……!」



踵を返す先輩を、マシロ君が呼び止めた。

先輩の見守りのもと、マシロ君は討ち入りしてきた鬼達の所へ向かう。

マシロ君に気付いた鬼達がその場で膝をついた。



「頭領!」



「酒呑童子様!」



「ようやくお会いできました……」



「お小さくなられて……」



「我らをお導きください!」



感動からか、泣き出すものもいる。



「きけ、おまえたち!」



「はっ!」



マシロ君は毅然として命令を下す。



「これから、にんげんをおそっちゃだめ! なかよくすること!」



「………え?」



「………しかし………」



「ボクのめいれいがきけないの?」



毅然と振る舞おうとしながらも、マシロ君の両の瞳に涙が溜まりだす。



「…そういうわけでは………」



「恐れながら、先に襲ってきたのは人間です……」



「俺達は身を守るために抵抗した……」



「そうだ、俺達は荒らされた里を取り戻そうとしただけ!」



「……そうなの?」



マシロ君は助けを求めるように先輩を見る。

その瞳は今にも溢れ出しそうに、不安に揺れていた。



「………ああ。残念ながら、先住の鬼を追い出して、人間がそこに村を作った。だが、先に手を出したのは鬼の方だと聞いている。子供が攫われた、と」



「攫ってなどいない! 迷い込んできたから面倒をみてたんだ!」



「それなのに、人間が大勢来て、里を焼いた!」



「誤解を解こうと、武器を持たずに近づいた頭領は一方的に封印され、無抵抗な同胞がたくさん殺された!」



「俺は、酒呑童子様の命令で、当時若かった同胞を連れて逃げたんだ!」



訴える鬼達は、当時の怒りを思い出したように力がこもる。


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