転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!
7
アルベール様のお顔が、さあっと青ざめる。エミールも同様だった。
「モニク……!?」
「義姉様、考え直してください!」
エミールは、必死の形相で叫んだ。
「確かに兄様は、お口は悪いしムードに欠けるし、女性へのアピールもド下手です。でも、義姉様を愛するお気持ちだけは、確かなんです! だから……」
「あ、違うのよ」
私は、慌てた。
「言葉が足りなくて、ごめんなさい。別れたふりをしましょう、と言いたかったの。ドニ殿下は、私が彼を疑っていることに、まだ気付いていないわ。私、アルベール様とは別れたと言って、彼と親しくなろうと思うの。近付いて、探ってみるわ」
目立たないようにこのミレー邸を訪れたのは、そのためである。
「ああ、そういうことですか。よかったあ」
エミールが、大げさに胸を撫で下ろす。一方アルベール様は、微妙なお顔をされていた。
「俺は、賛成しませんね。わかっているだけで、三人も殺害した男だ。近付くなんて、危険すぎますよ」
「大丈夫ですわよ。それに、止めてももう遅いですわ」
私は、きっぱりと宣言した。
「私、すでに殿下のお申し込みを受けましたの。二日後の鷹狩りでは、彼のパートナーを務めることになりましたわ」
「ちょっ……。何だって?」
アルベール様が、気色ばむ。私は、そんな彼をじろりとにらんだ。
「アルベール様にも、責任の一端はありましてよ? そう仰るなら、どうして私をパートナーに誘ってくださらないのです?」
「いや……、それは」
アルベール様は、決まり悪そうなお顔をされた。
「申し訳ない。事件のことで頭がいっぱいで、パートナーを選ぶこと自体、すっかり忘れていたんですよ。そもそも、元々は欠席の予定でしたし……」
「あら、そうでしたの。てっきり、他の女性を誘われるおつもりかと、ひがみましてよ」
私は、皮肉たっぷりに申し上げた。
「いえ、そんなことは! ……まあ、仕方ないですね。俺は、コレットにでも付き合ってもらいますか。いつも恒例ですし……」
「……それは、お止しになった方がいいと思いますわよ」
私は、やんわりと忠告した。コレットには、好きな男性がいることを思い出したのだ。どなたかは知らないが、きっとその人と組みたいことだろう。
「……なぜです?」
アルベール様が、きょとんとされる。私は、大きくため息をついた。
「アルベール様は、もう少し女心を勉強なさいませ。色事師の真似事をなさってきた割には、気が回らないんですのね」
「……その話、止めていただけませんか? もう昔のことですし」
アルベール様は、渋い表情になった。エミールが、すっとんきょうな声を上げる。
「『色事師』って何ですか?」
「やかましい。お前は、首を突っ込むな!」
八つ当たりか、アルベール様がエミールの頭をぺちりと叩く。
「大体、さっきは何だ。ドサクサに紛れて、俺の悪口を並べ立てやがって……」
兄弟が取っ組み合いを始めたその時、ノックの音がした。お顔をのぞかせたのは、ミレー夫人だった。
「モニク……!?」
「義姉様、考え直してください!」
エミールは、必死の形相で叫んだ。
「確かに兄様は、お口は悪いしムードに欠けるし、女性へのアピールもド下手です。でも、義姉様を愛するお気持ちだけは、確かなんです! だから……」
「あ、違うのよ」
私は、慌てた。
「言葉が足りなくて、ごめんなさい。別れたふりをしましょう、と言いたかったの。ドニ殿下は、私が彼を疑っていることに、まだ気付いていないわ。私、アルベール様とは別れたと言って、彼と親しくなろうと思うの。近付いて、探ってみるわ」
目立たないようにこのミレー邸を訪れたのは、そのためである。
「ああ、そういうことですか。よかったあ」
エミールが、大げさに胸を撫で下ろす。一方アルベール様は、微妙なお顔をされていた。
「俺は、賛成しませんね。わかっているだけで、三人も殺害した男だ。近付くなんて、危険すぎますよ」
「大丈夫ですわよ。それに、止めてももう遅いですわ」
私は、きっぱりと宣言した。
「私、すでに殿下のお申し込みを受けましたの。二日後の鷹狩りでは、彼のパートナーを務めることになりましたわ」
「ちょっ……。何だって?」
アルベール様が、気色ばむ。私は、そんな彼をじろりとにらんだ。
「アルベール様にも、責任の一端はありましてよ? そう仰るなら、どうして私をパートナーに誘ってくださらないのです?」
「いや……、それは」
アルベール様は、決まり悪そうなお顔をされた。
「申し訳ない。事件のことで頭がいっぱいで、パートナーを選ぶこと自体、すっかり忘れていたんですよ。そもそも、元々は欠席の予定でしたし……」
「あら、そうでしたの。てっきり、他の女性を誘われるおつもりかと、ひがみましてよ」
私は、皮肉たっぷりに申し上げた。
「いえ、そんなことは! ……まあ、仕方ないですね。俺は、コレットにでも付き合ってもらいますか。いつも恒例ですし……」
「……それは、お止しになった方がいいと思いますわよ」
私は、やんわりと忠告した。コレットには、好きな男性がいることを思い出したのだ。どなたかは知らないが、きっとその人と組みたいことだろう。
「……なぜです?」
アルベール様が、きょとんとされる。私は、大きくため息をついた。
「アルベール様は、もう少し女心を勉強なさいませ。色事師の真似事をなさってきた割には、気が回らないんですのね」
「……その話、止めていただけませんか? もう昔のことですし」
アルベール様は、渋い表情になった。エミールが、すっとんきょうな声を上げる。
「『色事師』って何ですか?」
「やかましい。お前は、首を突っ込むな!」
八つ当たりか、アルベール様がエミールの頭をぺちりと叩く。
「大体、さっきは何だ。ドサクサに紛れて、俺の悪口を並べ立てやがって……」
兄弟が取っ組み合いを始めたその時、ノックの音がした。お顔をのぞかせたのは、ミレー夫人だった。