転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!
8
「母上」
「母様」
アルベール様とエミールは、居住まいを正すと、ほぼ同時にかしこまった声を出した。血は繋がっていないというのに、その姿はそっくりで、私は思わず笑いをかみ殺した。
「あなたたちばかり、モニク嬢を独占するのはずるいわよ。私にも、譲ってちょうだいな」
ミレー夫人は、そう仰ると、私に微笑みかけられた。
「美味しいお菓子とお茶を、ご用意しましたのよ。一緒に、いかがかしら?」
「まあ、ありがとうございます」
お礼を申し上げると、夫人は満足そうに頷かれた。
「決まりね。ではこれからは、女性同士の時間よ。アルベール、モニク嬢をお借りするわね」
息子の返事を待たずに、夫人はドレスの裾を翻して踵を返した。私は、アルベール様とエミールに挨拶すると、慌てて彼女に従ったのだった。
連れて来られたのは、ミレー夫人のサロンだった。すでに、何種類ものパイや焼き菓子が並んでいる。その豪華さに、私は目を見張った。
「まあ……。どれも、とても美味しそうですわ」
「気に入っていただけたなら、よかったわ。アルベールのことだから、どうせ物騒な殺人事件の話ばかりしているのでしょう。私、モニク嬢に、息抜きをしていただきたかったの」
勧められ、私はお茶とパイを口にした。夫人が、ぶつぶつと続けられる。
「男の子ばかりって、つまらないものねえ。エミールまで、事件に首を突っ込んでしまって。全く、何を考えているのやら」
「あら、でもエミールは、重要な記録を持ち帰ってくれましたのよ」
そこで私は、ふと思いついた。勇気を出して、尋ねてみる。
「せっかく、息抜きと言ってくださったのに、相変わらずの話題で申し訳ないのですけれど。実は今回の事件は、九年前の王妃殿下の死と関係があるかもしれないのです。もしよろしければ、妃殿下がどんな方だったか、教えていただけませんか」
国王陛下の従弟・ミレー公爵の夫人なら、さぞ王妃殿下とも近しかったことだろう。私は、彼女の目を見つめた。
「母様」
アルベール様とエミールは、居住まいを正すと、ほぼ同時にかしこまった声を出した。血は繋がっていないというのに、その姿はそっくりで、私は思わず笑いをかみ殺した。
「あなたたちばかり、モニク嬢を独占するのはずるいわよ。私にも、譲ってちょうだいな」
ミレー夫人は、そう仰ると、私に微笑みかけられた。
「美味しいお菓子とお茶を、ご用意しましたのよ。一緒に、いかがかしら?」
「まあ、ありがとうございます」
お礼を申し上げると、夫人は満足そうに頷かれた。
「決まりね。ではこれからは、女性同士の時間よ。アルベール、モニク嬢をお借りするわね」
息子の返事を待たずに、夫人はドレスの裾を翻して踵を返した。私は、アルベール様とエミールに挨拶すると、慌てて彼女に従ったのだった。
連れて来られたのは、ミレー夫人のサロンだった。すでに、何種類ものパイや焼き菓子が並んでいる。その豪華さに、私は目を見張った。
「まあ……。どれも、とても美味しそうですわ」
「気に入っていただけたなら、よかったわ。アルベールのことだから、どうせ物騒な殺人事件の話ばかりしているのでしょう。私、モニク嬢に、息抜きをしていただきたかったの」
勧められ、私はお茶とパイを口にした。夫人が、ぶつぶつと続けられる。
「男の子ばかりって、つまらないものねえ。エミールまで、事件に首を突っ込んでしまって。全く、何を考えているのやら」
「あら、でもエミールは、重要な記録を持ち帰ってくれましたのよ」
そこで私は、ふと思いついた。勇気を出して、尋ねてみる。
「せっかく、息抜きと言ってくださったのに、相変わらずの話題で申し訳ないのですけれど。実は今回の事件は、九年前の王妃殿下の死と関係があるかもしれないのです。もしよろしければ、妃殿下がどんな方だったか、教えていただけませんか」
国王陛下の従弟・ミレー公爵の夫人なら、さぞ王妃殿下とも近しかったことだろう。私は、彼女の目を見つめた。