転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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「母上」

「母様」



 アルベール様とエミールは、居住まいを正すと、ほぼ同時にかしこまった声を出した。血は繋がっていないというのに、その姿はそっくりで、私は思わず笑いをかみ殺した。



「あなたたちばかり、モニク嬢を独占するのはずるいわよ。私にも、譲ってちょうだいな」



 ミレー夫人は、そう仰ると、私に微笑みかけられた。



「美味しいお菓子とお茶を、ご用意しましたのよ。一緒に、いかがかしら?」

「まあ、ありがとうございます」



 お礼を申し上げると、夫人は満足そうに頷かれた。



「決まりね。ではこれからは、女性同士の時間よ。アルベール、モニク嬢をお借りするわね」



 息子の返事を待たずに、夫人はドレスの裾を翻して踵を返した。私は、アルベール様とエミールに挨拶すると、慌てて彼女に従ったのだった。



 連れて来られたのは、ミレー夫人のサロンだった。すでに、何種類ものパイや焼き菓子が並んでいる。その豪華さに、私は目を見張った。



「まあ……。どれも、とても美味しそうですわ」

「気に入っていただけたなら、よかったわ。アルベールのことだから、どうせ物騒な殺人事件の話ばかりしているのでしょう。私、モニク嬢に、息抜きをしていただきたかったの」



 勧められ、私はお茶とパイを口にした。夫人が、ぶつぶつと続けられる。



「男の子ばかりって、つまらないものねえ。エミールまで、事件に首を突っ込んでしまって。全く、何を考えているのやら」

「あら、でもエミールは、重要な記録を持ち帰ってくれましたのよ」



 そこで私は、ふと思いついた。勇気を出して、尋ねてみる。



「せっかく、息抜きと言ってくださったのに、相変わらずの話題で申し訳ないのですけれど。実は今回の事件は、九年前の王妃殿下の死と関係があるかもしれないのです。もしよろしければ、妃殿下がどんな方だったか、教えていただけませんか」



 国王陛下の従弟・ミレー公爵の夫人なら、さぞ王妃殿下とも近しかったことだろう。私は、彼女の目を見つめた。
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