転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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「じゃあドニ殿下は、以前からマルク殿下に毒を盛っていたと!?」



 アルベール様が、血相を変えられる。モンタギュー侯爵は、蒼白な表情で頷かれた。



「王太子殿下のご体調に関わることなので、一部の者しか知りませんが、この症状は確かにそうです。……そういえば、マルク殿下がお体の不調を訴えられるようになったのは、王妃殿下が亡くなられた後からでした。ご心痛によるものと、皆解釈していたのですが……」



 侯爵は、勢い良く立ち上がられた。



「こうしてはいられない。すぐに国王陛下にご報告すると共に、王妃殿下が亡くなられた当時のことを、調べます。アルベール殿、この調香記録はお預かりしますぞ?」

「もちろんです。どうぞ、お持ちください」



 一瞬あっと思ったものの、仕方ないなと私は思った。どのみち、この記録にタバインと男性不妊を結びつける記載は無い。持っていても意味は無いし、第一今は、マルク殿下の身の安全が優先だ。



「モニク嬢、何か?」



 私の浮かない表情に、モンタギュー侯爵は気付かれたようだった。こんな時にどうかとは思ったが、私は思いきって尋ねてみた。



「モンタギュー様、ご相談があります。植物に非常にお詳しい学者の方を、どなたかご存じありませんか?」

「ああ、でしたら」



 侯爵は、即答なさった。



「デュポン侯爵でしょうな。モルフォア王国一の、植物学の権威でいらっしゃいます」

「どうしてです?」



 アルベール様が、お尋ねになる。



「知りたいことがあるのです。でも、なかなか本を調べても見つからなくて」



 タバインと男性不妊の因果関係は、あくまで私の仮説だ。アルベール様をぬか喜びさせたくなくて、私は慎重に答えた。するとモンタギュー侯爵は、こう言い出された。



「ですが、モニク嬢。デュポン侯爵は、王室のお抱え学者でいらっしゃいますよ。気軽に面会して質問など、できる方ではありませんが?」

「ええ、そうなのですか?」



 私は、愕然とした。



「はい、残念ながら。国王陛下や王太子殿下でもなければ、まず難しいかと。私やアルベール殿でも、無理でしょうな」



 つまり伯爵家の娘ごときでは、当然駄目に決まっている。私は、がっくりとうなだれた。
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