転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

13

「モーリス……!? 本気で……?」



 ええ、とモーリスは真剣な顔で頷いた。



「アルベール様のお父上は、国王陛下のご親戚です。陛下がそのことをお知りになったところで、アルベール様に非情な仕打ちはなさりますまい」

「……でも」



 私は、ためらった。



「アルベール様はご処分を免れたとしても、サリアン家が見逃してもらえるとは思えないわ。陛下や王太子殿下をコケにして、お父様は一体どんな目に遭わされることか……」



 それを聞いてコレットは、目をつり上げた。



「この期に及んで、旦那様のご心配ですか?」

「そりゃ、そうよ。それに、お父様がご不興を買えば、バルバラ様やローズだって路頭に迷うかもしれない。あなたたち、使用人もよ。そんな大勢の人を犠牲にするなんて、私には……」

「モニク様!」



 コレットは、身を乗り出した。



「よく、思い出してくださいまし。モニク様が殺人の嫌疑をかけられた時、旦那様やバルバラ様、ローズ様は、信じてくださらなかったではないですか。いつもモニク様のために尽力してきたアルベールよりも、そんな彼らを選ぶというのですか? アルベールとサリアン家、モニク様にとって大切なのは、一体どちらなのです!」 



 私は、思わず絶句した。モーリスも、頷く。



「サリアン家を思ってくださるお嬢様のお気持ちもわかりますが、もう少しご自分のご希望を仰ってもいいと思いますよ。あの殺人と記憶喪失事件以来、お嬢様は自己主張ができるようになられたと、私は喜ばしく思っていました。また、元通りになられるのですか?」



 私は、ハッとした。その通りだ。前世で命を落とす直前、私は誓ったではないか。



 ――生まれ変わったら、今度こそちゃんと自己主張する……。



 私の背中を押すように、モーリスが付け加える。



「そして使用人たちのことなら、ご心配無く。彼らの今後は、私が責任を持ってどうにかいたします」

「モーリス……」



 私は、思わず彼の手を取った。



「ありがとう、本当に……」

「よし、では早速、準備しましょう!」



 コレットが、勢い込む。



「必要な物は、後でお届けしますから。モニク様は、とにかく早く屋敷を出られた方がいいです」

「わかったわ」



 私は、お母様の形見のブローチと、アルベール様からいただいた指輪と香水、そして最低限の着替えを準備した。コレットが、コンパクトな荷物にまとめてくれる。廊下に人気が無いのを確認して、私たち三人は、部屋を出て玄関へと向かった。



「辻馬車を拾いましょう。私も、一緒に付いて……」



 だが、そんなコレットの言葉は、途中で止まった。私たちの前に、お父様と数人の従僕が立ちはだかったのだ。



「どこへ行く気だ? まさか、アルベール様の所じゃあるまいな」



 お父様は、険しい表情で仰った。
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