転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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「お父様……」



 私は、愕然とした。バルバラ様をなだめるのにお忙しくて、それどころでは無いと思っていたのに。するとお父様は、従僕たちに向かってこう告げた。



「お前たちが忠告してくれて、助かった。モニクを監視してくれ。明日、王宮からお迎えが来るまで、部屋からは一歩も出すな」



 かしこまりました、と頷くと、従僕たちは左右から私の腕を取った。モーリスが、気色ばむ。



「お前たち!」

「モーリスさん。悪いけど俺たち、薄給にはもううんざりなんですよね」



 従僕の一人が、ため息をつきながら言う。



「王太子妃を輩出した家となったら、待遇も良くなるでしょ。てなわけで、モニクお嬢様には、何としても王太子殿下に嫁いでいただかないといけないんです」



 私が家出しようとしていることに感付いて、お父様をそそのかしたのは、どうやら彼ららしかった。確かに、給料が安いのは事実だけれど。それは、お父様の領地経営の下手さと、バルバラ様やローズの浪費のせいなのに……。



「お前たちは、お嬢様の幸せを考えないのか!」



 モーリスが、声を荒らげる。



「大体……」

「モーリス」



 お父様は、モーリスの言葉をさえぎった。冷ややかな眼差しで、彼を見すえる。



「いい機会だ、ついでに言おう。お前はクビだ。そして、コレットも」



(何ですって……!?)



 私は、耳を疑った。雇われたばかりのコレットはともかく、モーリスは、代々サリアン伯爵家に仕える、執事の家の出だというのに……。



「お前の小言には、正直うんざりしていてね。王太子妃の実家となれば、良い執事は今後いくらでも雇える。さあ、わかったなら荷物をまとめて出て行け。コレットもだぞ」



 モーリスが、呆然と立ち尽くす。私は、従僕の一人が薄笑いを浮かべているのに気付いた。どうやら執事の座を狙っているらしく、機会あるごとにお父様に取り入っている男だ。私は、カッとなった。



「お父様! 私のことはともかく、モーリスのことは考え直してくださいませ! 彼は、心底このサリアン家のことを思って……」

「黙れ」



 お父様が、苛立たしげにわめく。



「お前はとにかく、明日の迎えに備えて支度していろ! ……まったく、本当に家出を企むとは。お前がそこまでふしだらな娘とは、思わなかった!」



 言いたいことだけ言い捨てると、お父様は踵を返して去って行ったのだった。
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