転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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「どうやって……!?」

「門番には、大量の酒を与えました。ちなみに、睡眠薬入り」



 アルベール様は、悪戯っぽく微笑まれた。



「窓からあなたの部屋へ入ろうとしていたのですがね。中庭で、人の気配がしたもので。もしやこちらで、思い出に浸ってらっしゃるのかな、と見当を付けました」

「大正解ですわ」



 そんな場合ではないというのに、私は思わずクスリと笑ってしまった。



「……ところで、彼は?」



 倒れている従僕を指すと、アルベール様はこともなげに答えた。



「気絶させただけです。ご心配無く。……とはいえ、話は手短に済ませた方がいいですね」



 アルベール様は、早口で語り始めた。



「国王陛下が、あなたを王太子妃に望まれていると聞いて、俺はすぐにマルク殿下の所へ伺いました。殺人事件解決のために別れたふりをしていただけで、俺とあなたは愛し合っている、結婚も誓い合った仲だとお伝えしたのです。それなら父上にお願いして無かったことにしようと、言ってくださいましたよ。そもそもこの話は、殿下のご同意無しに、陛下が勝手に進められたようです」



 私は、ほっと胸を撫で下ろした。



「よかったですわ。本当は、あなたの元へ参ろうとしていたのです。でも、お父様の家臣たちに軟禁されてしまって……」

「うん、コレットから事情は聞きました。その上、執事さんまで解雇なさったとか」



 アルベール様は、知ったご様子で頷いた。



「あなたのお父上を悪く言いたくないのですが、使えないを通り越して害悪のレベルですね」

「……いえ、本当のことですので」



 私は、ため息をついた。



「国王陛下が乗り気で、あなたのお父上が受けてしまわれたとなったら、いくらご当人のマルク殿下とあなたが反対されても、なかなか難しいかもしれませんね」



 アルベール様が、冷静な口調で仰る。私は、おやと思った。彼がここへ来てくださった時、迎えに来てくれたのかと、ちょっぴり期待したのだけれど。



(そういうおつもりでは無かったのかしら……?)
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