転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

2

 王宮に到着すると、私には専用の部屋が与えられた。王太子妃教育を受けるためだけの部屋だというのに、その豪華さには恐れ入る。サリアン邸の私の自室の三個分の広さだわ、と私は密かに思った。



 休む間も無く、着替えさせられる。侍女たちが退室すると、入れ替わりに年配の夫人がやって来られた。代々、お妃の教育係を務められる侯爵家の方だという。



「こちらが、当面の授業予定でございます」



 見せられたスケジュール表に、私は頭がくらくらしそうになった。朝から晩まで、食事の時間以外は休み無しに授業が続いていたのだ。ローズにはとても耐えられそうにないな、と私はチラと思った。私自身は学問は嫌いではないから、勉強自体は構わない。だが問題は、自由時間が無いことだった。私は、夫人に尋ねてみた。



「外出の機会は、いただけないのでしょうか?」

「とんでもありません」



 夫人は、厳しい表情でかぶりを振られた。



「外どころか、王宮内も自由な行動はできないものとお心得ください。……それとも、会いたい方でもいらっしゃるのですか?」



 鋭い眼差しで、見すえられる。アルベール様に会おうとしていたことを見透かされたようで、私はドキリとした。



「い、いいえ……! 急に決まったお話ですので、まだ友人に挨拶ができていないのが、心残りだったのですわ」

「確かに窮屈なスケジュールですが、これはジョゼフ五世陛下のご指示です。モニク嬢には、一刻も早く王太子妃にふさわしい女性になっていただきたいとのこと。そのためには、多少のことは犠牲にしていただかないといけません」



 陛下はなぜそこまで急がれるのだろうか、と私は内心首をかしげた。



「承知しました……。でも、マルク殿下には会わせていただけるのですよね?」



 アルベール様やモンタギュー侯爵に会えないのなら、彼に打ち明けようかと考えたのだ。だが夫人は、それも否定された。



「できかねます。教育が無事終了するまでは、殿下とは距離を置いていただきます」

「そんな……」



 当の婚約者だというのに。かくなる上は、これは殺人事件絡みなのだとぶちまけようか。悩んでいたその時、ノックの音がした。扉を開けた夫人は、眉をひそめられた。



「殿下!? 教育期間が終わるまでは……」



 いらっしゃったのは、何とマルク殿下だったのだ。殿下は、夫人と私を見比べて、こう仰った。



「本来面会できないのは、承知している。だが私は、モニク嬢に緊急の用があるのだ。これは、父上の許可も得ている」
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