転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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「――どうしてですの!?」



 私は、仰天した。するとマルク殿下は、声を落とされた。



「ここだけの話にしていただきたいのですが、実は私には、持病があります。余命は、長くありません。持って、あと一年というところでしょう。恐らくは、父上より先に逝くことになるかと」



 私は、絶句した。



「発覚したのは、十五の年です。ちなみにこのことは、主治医しか知りません。父上にも、当時存命だった母上にも、そしてドニにも黙っているよう、固く口止めしております。ずっと結婚を拒否していたのは、それが理由です。短い命が尽きるまで、このモルフォア王国のために尽くし、後はドニに託そう……。そう考えてきました」



 王妃殿下がご存命の頃に発覚したのであれば、ご病気は毒物とは関係無いだろう。ではドニ殿下は、必要の無い犯罪を犯されたということか、と私は愕然とした。何もなさらなくても、王位は最初から彼のものだったのに……。



「今回、ドニが私情に駆られて偽証を唆したことには、確かに失望しました」



 マルク殿下は、静かに続けられた。



「だが彼には、健康な体と、国を治めるに足る十分な能力があります。そもそも、王位継承者は他におりません。だから……」

「でも、それはダメですわ!」



 私は、思わず大声を上げていた。殿下が、怪訝そうになさる。



「どうしてです?」 



 私は、決意した。十分な証拠も無い段階で、しかもアルベール様やモンタギュー侯爵に相談もせず、勝手に話すべきではないとわかっている。だが、ドニ殿下に王位を譲るなど、許してはいけない……。



「マルク殿下。このようなことを申し上げるのは、まことに心苦しいのですが。聞いていただけますか」
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