転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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「本当ですの!?」



 私は、弾んだ声になるのを抑えきれなかった。はい、とにこにこしながらマルク殿下が頷かれる。



「モニク嬢は、手放すには惜しい女性だが、約束は約束だ、とね」



(よかった……)



 感動で、涙がにじみそうだ。アルベール様は、そんな私の肩を、優しく抱いてくださった。マルク殿下が、私とアルベール様を見比べられる。



「良い結果になりましたね。お二人は、お似合いですよ。お二人のおかげで、私は王太子としての心構えを再認識できました」



 おや、と私はアルベール様のお顔を見た。彼もまた、マルク殿下に何か申し上げたのだろうか。すると殿下は、こんなことを言い出された。



「今回、アルベール殿にはたいそうきつく叱られたのですよ。モニク嬢をドニの元へ送り込んだ後、アルベール殿に報告したところ、彼は激怒されましてね。『殺人犯確保のために、一女性を危険にさらすなど、王太子のすることか』と言われました」



 ひえっと、私は悲鳴を上げそうになった。いくら頭に血が上られたとはいえ、王太子殿下に向かって、そんなことを申し上げるなんて。だがマルク殿下は、穏やかな笑みを浮かべておられた。



「いいんですよ。怒ってはおりません。本当のことですから……。さあ、モニク嬢はもう休まれてください。さぞお疲れでしょう」

「すぐにでもミレー家へお連れしたいところですが、今夜は王宮に泊まっていただいた方がいいですね?」



 アルベール様が、殿下に尋ねられる。そうですね、と殿下は頷かれた。



「もう遅いですから。引き続き、同じ部屋をお使いください。では」



 帰ろうとなさるマルク殿下を、私は呼び止めた。



「お待ちくださいませ。……これは、どういたしましょう?」



 例のロケットをお見せすると、殿下はふっと顔を曇らせた。



「ひとまず、私がお預かりしましょう。……後でドニに返してやります」



 丁重にロケットを受け取ると、マルク殿下は去って行かれた。二人きりになると、アルベール様はふと呟かれた。



「ロケットにつられて、自白するとはね。親の形見というのは、それほどまでに大切なものなのでしょうか。俺には、そういうものが無いので……」



 きゅっと、胸が締め付けられる気がした。
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