転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

6

「殿下が、先日仰っていた通りでございましょう? 私なら泣き寝入りすると思われたのですわ」

「……まあ、それもあったようですが」



 モンタギュー侯爵は、言いづらそうに仰った。



「モニク嬢は、ドニ殿下にトピアリーをお見せして、お母上の思い出を語られたことがあるそうですな。その際のあなたが、実にお幸せそうだったことから、殿下は激しくあなたを妬まれたそうなのですよ。殿下にとってシュザンヌ妃の思い出といえば、お辛いものばかりだったから、と……」



「そんなことで、モニクを殺人犯に仕立てようとしたのですか!」



 アルベール様は、吐き捨てるように仰った。見れば、唇が震えてらっしゃる。彼の激しい怒りが感じられた。一方私は、その時のことを思い出していた。トピアリーの話を、殿下は静かに聞いてらっしゃったけれど。内心では、そんなことを考えられていたのか……。



「くだらないですよ」



 アルベール様は、ぽつりと仰った。



「親の思い出があるだけ、ましじゃないですか。無い人間だって、世の中にはいる……」



 私は、ドキリとした。事情を知らないモンタギュー侯爵は、一般論と捉えたらしく、「そうですな」とあっさり頷かれた。



「ですが殿下としては、モニク嬢が憎らしかったようで。最後に殺そうとしたのも、それが理由だったようです」



 私は、黙り込んだ。侯爵が、続けられる。



「ドニ殿下の話は、以上です。本日中には、ジョゼフ五世陛下の裁定が下りるものと……。続いて、モニク嬢の襲撃事件なのですが。護衛を買収して、犯行を命じた人間がわかりました」

「本当ですか? 一体、誰が?」



 私は、身を乗り出した。ドニ殿下には、あれ以上協力者はいない様子だったから、彼の関連では無いだろうと踏んでいたのだけれど。他に私を恨む人間が、いたのだろうか。



「これもまた、言いにくいのですが」



 侯爵が、一つため息をつかれる。



「あなたの義理のお母上、バルバラ夫人です」
< 180 / 228 >

この作品をシェア

pagetop