転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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 モンタギュー侯爵とコレットへの挨拶を終えると、アルベール様の周りには、我先にと貴族らが集まってきた。皆、取り入りたいのが見え見えだ。自然と弾き出された形になり、私はその場を離れた。すると、聞き覚えのある声がした。



「モニク嬢!」



 振り返って、私は驚いた。デュポン侯爵だったのだ。彼も、出席されていたのか。



「先日は、お手紙をありがとうございました。助かりましたわ」



 私は、心から礼を述べた。とんでもない、と侯爵がかぶりを振られる。



「あなたのおかげで、私も学者としての立場を再認識しましてな。権威などと言われ、どうやらそのレッテルにあぐらを掻いていたようです」



 やや照れくさそうに、侯爵が仰る。



「今一度、新たな気持ちで研究に取り組みたいと考えていましてな……。助手も、雇うつもりです」



 まあ、と私は目を見張った。すると侯爵は、さらに意外な言葉を続けられた。



「本当は、あなたをお誘いするつもりだったのです。あなたは、実に画期的な視点をお持ちだ……。とはいえ、それは無理ですな。お妃になられるような方に、そんなことはお願いできません」



 残念な思いが、ふとよぎった。植物の研究のお手伝いができたら、どれほど楽しいだろうかと思ったのだ。けれど、王子妃になったら、成すべきことは山ほどあるだろう。時間など、取れないに違いなかった。



「嬉しいお言葉、ありがとうございます。私でお力になれることがあれば、何なりと仰ってくださいませ」



 内心を押し隠して、私は侯爵に、深々と頭を下げたのだった。
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