転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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 パーティーは、大盛況のうちに終了となった。帰りの馬車に乗り込むと、アルベール様が尋ねてこられた。



「そういえば、デュポン侯爵と話し込まれていましたね。一体、何だったのです?」



 気が付いておられたのか、と私は驚いた。とはいえ、助手の話をすれば、私が機会を逃したと、彼は気にされるだろう。私はとっさに、その件を伏せることにした。



「植物について、いろいろお話ししていただけですわ」

「……そうですか」



 アルベール様は、なぜかちょっと寂しそうなお顔をされた。



「……いえ。あなたと共通の話題で盛り上がれるなんて、羨ましくて。妬けました」



 とんでもない方向に彼の考えが及んだことに、私は仰天した。



「何を仰っているんです? デュポン侯爵は、六十五歳でいらっしゃいますのよ。下手をすれば、私の祖父のような年齢ですわ」

「何歳だろうが、男性は男性でしょう」



 アルベール様が、口を尖らせる。私は、何だか可笑しくなった。私はコレットに軽く嫉妬したけれど、彼はもっとくだらないヤキモチを焼いていたなんて。知らず、微笑を浮かべていたらしい。アルベール様が、怪訝そうにされる。



「何がおかしいのです?」

「いーえ、別に?」

「気になるなあ」



 アルベール様が私の手を握り、顔をのぞきこもうとされる。だがその時、大きな咳払いが聞こえた。



(そうだった。ミレー夫妻も、ご一緒なのだったわ……)



 我に返った私たちは、はたと赤面したのだった。



 やがて、ミレー邸へと到着する。私たちが玄関へ足を踏み入れると、なぜかエミールが立ち尽くしていた。その表情は悲壮で、私たちは怪訝に思った。



「父様、母様」



 彼は、ミレー夫妻をキッと見すえた。



「お聞きしたいことがあります。僕は、父様と母様の子供ではないのですか」
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