転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!
2
エミールとミレー公爵を乗せた馬車が去って行くと、モンタギュー侯爵がため息をつかれた。やけに憔悴なさっている。
「どうされました?」
アルベール様が、尋ねられる。
「いえ、ようやく特命から解放されて、ほっとしたのですよ」
「特命?」
「ここだけの話ですけれどね」
侯爵は、声を落とされた。
「ジョゼフ五世陛下は私に、鷹狩りの際の『エミリー』を捜せと命じられたのです。ミレー家の縁の方なのだから、ミレー家の方に聞かれればいいのにと思いましたが。どうやら陛下としては、恥ずかしかったようで」
「そんなこと、今さらでしょうに」
アルベール様が、ぼそっと呟かれる。
「ただでさえ、殺人犯確保に麻薬の摘発でクソ忙しいのに、いくら捜しても見つからないし、どれほど大変だったことか。まさか、実在しない女性だったとはねえ」
「……それは、大変申し訳なかったです」
アルベール様は、すまなさそうに仰った。私も、呆れた。あの時、『エミリー』に興味を持ったのかと揶揄したローズに対して、陛下はそういう意味ではないと仰っていたけれど。
(やっぱり、そういう意味だったではございませんか……!)
「いえ。それよりも、式典が終わったら、いよいよお二人の結婚式ですな。こちらは、先を越されてしまいました」
モンタギュー侯爵が、にこにこされる。ミレー夫人の奮闘のおかげで、ご即位二十五周年記念式典(兼エミールのお披露目式典)の直後に、私とアルベール様は挙式することになったのである。婚約披露自体は、侯爵とコレットの方が早かったのだが、式は私たちの方が先に行うことになった。
「楽しみですわ」
コレットも頷く。そして、とんでもないことを言い出した。
「私、当日は、モニクのお支度の手伝いに伺いたいですわ」
「あら、何を言っているの」
私は、びっくりして固辞した。
「モンタギュー侯爵夫人に、侍女の仕事をさせるなんて。第一あなただって、ご自分の準備でお忙しいでしょう?」
「いーえ、それだけはさせてください。コルセット装着術で、私の右に出る者はおりませんわ。大好きなモニクの、一生の晴れ舞台ですもの。この手で、美しく着飾って差し上げたいのです」
コレットが、頑なに言い張る。侯爵のお顔を見れば、「彼女の好きにさせてやってください」と仰った。
「じゃあ……、お願いしようかしら?」
「任せてください!」
あの地獄の締め上げが待っているのかあ、と私は身震いした。
(でも、頑張ろう。アルベール様に恥を掻かせないような、美しい花嫁になるために……)
「どうされました?」
アルベール様が、尋ねられる。
「いえ、ようやく特命から解放されて、ほっとしたのですよ」
「特命?」
「ここだけの話ですけれどね」
侯爵は、声を落とされた。
「ジョゼフ五世陛下は私に、鷹狩りの際の『エミリー』を捜せと命じられたのです。ミレー家の縁の方なのだから、ミレー家の方に聞かれればいいのにと思いましたが。どうやら陛下としては、恥ずかしかったようで」
「そんなこと、今さらでしょうに」
アルベール様が、ぼそっと呟かれる。
「ただでさえ、殺人犯確保に麻薬の摘発でクソ忙しいのに、いくら捜しても見つからないし、どれほど大変だったことか。まさか、実在しない女性だったとはねえ」
「……それは、大変申し訳なかったです」
アルベール様は、すまなさそうに仰った。私も、呆れた。あの時、『エミリー』に興味を持ったのかと揶揄したローズに対して、陛下はそういう意味ではないと仰っていたけれど。
(やっぱり、そういう意味だったではございませんか……!)
「いえ。それよりも、式典が終わったら、いよいよお二人の結婚式ですな。こちらは、先を越されてしまいました」
モンタギュー侯爵が、にこにこされる。ミレー夫人の奮闘のおかげで、ご即位二十五周年記念式典(兼エミールのお披露目式典)の直後に、私とアルベール様は挙式することになったのである。婚約披露自体は、侯爵とコレットの方が早かったのだが、式は私たちの方が先に行うことになった。
「楽しみですわ」
コレットも頷く。そして、とんでもないことを言い出した。
「私、当日は、モニクのお支度の手伝いに伺いたいですわ」
「あら、何を言っているの」
私は、びっくりして固辞した。
「モンタギュー侯爵夫人に、侍女の仕事をさせるなんて。第一あなただって、ご自分の準備でお忙しいでしょう?」
「いーえ、それだけはさせてください。コルセット装着術で、私の右に出る者はおりませんわ。大好きなモニクの、一生の晴れ舞台ですもの。この手で、美しく着飾って差し上げたいのです」
コレットが、頑なに言い張る。侯爵のお顔を見れば、「彼女の好きにさせてやってください」と仰った。
「じゃあ……、お願いしようかしら?」
「任せてください!」
あの地獄の締め上げが待っているのかあ、と私は身震いした。
(でも、頑張ろう。アルベール様に恥を掻かせないような、美しい花嫁になるために……)