転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

3

 モンタギュー侯爵とコレットが帰って行かれると、ミレー夫人は屋敷の中へ引っ込まれた。私とアルベール様は、何となく顔を見合わせていた。



「モンタギュー様には、ご苦労をかけましたわね」

「全くです。まさか陛下が、『エミリー』を捜しておられたとは」



 アルベール様は、ジョゼフ五世陛下を『陛下』と呼び続ける。今でこそミレー家に留まることに決まったが、王室入りの話が進んでいた時も、ずっとそうだった。やはり、父と呼ぶ気にはなれないのだろう。



「あと何人、兄弟姉妹が登場しようが、俺はもう驚きませんよ」



 アルベール様は、クスリと笑われた。



「昨日、エミールを陛下にお目通ししたでしょう?」

「ええ」



 ミレー公爵とアルベール様は、昨日エミールを連れて、陛下の元へ伺ったのだ。



「その際に、陛下がお持ちのロケットを見せていただいたのですよ。この前俺たちがいただいたのと、対の物です。俺とエミールは、初めて母親の顔を知りました」

「それはよろしかったですわ」



 私は、心から嬉しく思った。



「黒髪で、黒い瞳の女性でした。顔立ちは……、似ていると言えば、似ているのかな。自分では、よくわかりません」



 アルベール様は、気恥ずかしそうな笑みを浮かべられた。



「ただねえ……。シュザンヌ妃の分も併せても、ロケットは三つのはずと思っていたのですが。どう見ても、陛下の懐にはそれ以上の数があったような……」

「……」

「まあ、世の中には、追及しない方がよいこともありますからね」



 先日の私の台詞を引用して、アルベール様は話を切り上げられた。



「ええ。エミールの活躍を、祈るだけですわ……。彼が言っていた、陛下の夢って何なのかしら?」



 エミールは、私たちにも話してくれなかったのだ。



「俺にも、想像がつきませんが……。ま、そのうちわかるでしょう。ひとまずは、目の前の結婚式のことを考えましょうか」



 軽く肩を叩かれて、私は頷いた。そう、式まではあと十日……。
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