転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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 応接間へ行くと、果たしてお父様とバルバラ様、そして二人の殿下がいらっしゃった。ローズも、私の後からちゃっかり部屋に入って来た。



「お待たせしまして、大変申し訳ございません。わざわざお越しいただき、ありがとう存じます」



 私は、丁重にお二人にご挨拶申し上げた。応えてお二人も、礼を返される。



「この度は突然のご不幸、心よりお悔やみ申し上げます。お辛いでしょうが、どうかお気をしっかりお持ちください」



 沈痛の表情でそう仰るのは、マルク王太子殿下だ。ジョゼフ五世陛下と、すでに亡くなられた王妃殿下の間のお子である。お体は少し弱いそうだが、温厚で聡明なお人柄で、国民たちからは慕われる存在だ。



「本当です。モニク嬢のことが心配だ。私で力になれることがあれば、何なりと仰ってください」



 ドニ殿下が、力強く仰る。目が合い、こんな場合だというのに、私はドキリとしてしまった。殿下は、これまた亡くなられたご側妃がお産みになった第二王子だが、マルク殿下に負けず劣らずの優秀さだ。むしろ、明るくハキハキしたご性格のせいか、マルク殿下よりも人望がおありなくらいである。引っ込み思案な私は、パーティーではいつも壁の花なのだが、殿下はそんな私をいつも気遣ってくださる。正直、密かに憧れていたのだった。



「ありがたきお言葉、痛み入ります」



 私は、言葉少なに礼を申し述べた。すると、ローズが口を挟んできた。



「婚約披露パーティーのその夜に、婚約者を失うだなんて。義姉が気の毒でなりませんわ。私、昨夜は一睡もできませんでしたの。義姉の気持ちを思うと……」



 わざとらしく、ローズが目頭を押さえる。ちなみに彼女の神経は、鋼入りの図太さだ。『不眠』などという言葉は、彼女の辞書には無いはずなのだけれど。



「もう、この子ったら義姉べったりなものですから」



 ほほほ、とバルバラ様が笑われる。彼女は、チラチラとマルク殿下を見ながら、こう付け加えた。



「ご存じの通り、母親違いの姉妹ですけれど、二人は本当に仲が良いんですのよ。ローズはいつも、お義姉様、お義姉様、とモニクにまとわりつく甘えん坊ですの」



 ははあ、と私は思った。私とアルベール様の縁談に対抗して、ローズを王太子殿下に売り込もう、という腹だろう。えらく気合いの入った彼女のメイクは、そのためか。大きく出たな、お義母様、と私は感心した。
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