転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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 すると、アルベール様の手がスッと伸びてきた。彼は、私の手に自らのそれを重ねた。



「大丈夫ですよ。俺も同席しますから」



 私は頷くと、モーリスに向かって「お通しして」と告げた。



「私は、外します。早速、聞き込みをして来ますわ」



 コレットが、応接間を出て行く。私は、自分に言い聞かせた。



(平気よ。アルベール様が仰った通り、今までの私とは違うのだから。切り抜けてみせる……)



 やがて、モンタギュー侯爵が応接間へとやって来られた。鋭い眼差しと大柄な体格が特徴の、威圧感がある方だ。カーテシーでお迎えしようとした私だったが、おやと思った。侯爵の後から、ドニ殿下が入って来られたのだ。



(どうして、殿下まで……?)



「兄が陣頭指揮を執りたがっていたのですが、あいにく体調が優れないもので。私が、代わりに伺いましたよ。……それに、モニク嬢が心配でしたし」



 殿下は、穏やかに微笑まれた。一方のモンタギュー侯爵は、厳しい表情をなさっている。



「私も、代理です。団長の、ですが」



 王立騎士団長は、アルベール様のお父上・ミレー公爵が務められているのだ。そして彼は、こう続けた。



「何と言っても、ミレー公爵のご子息は、最重要容疑者の恋人で、アリバイ証言者でもいらっしゃる。私情が入ってはいけませんのでな」

「その仰り様は……」



 アルベール様が、気色ばむ。私は、そんな彼を押し止めると、侯爵の目を見つめて告げた。



「モンタギュー様。お忙しい所、我がサリアン邸で起きた事件のことでお手を煩わせ、大変恐縮でございます。私にできることでしたら、何なりとご協力いたします。ですが、『最重要容疑者』という表現は、撤回していただきたいですわ。たったあれだけの物証で、私を犯人扱いされるなんて、ずいぶんと短絡的でいらっしゃいますのね」



 アルベール様とドニ殿下は、驚いたように私をご覧になった。だが、さすがは切れ者と言われるだけのことはある。モンタギュー侯爵は、少しも動じなかった。



「物証があれだけとは、まだ決まったわけではございませんな。サリアン伯爵のご同意も得て、現在、事件の起きた部屋を調査中です」
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