転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!
3
「参列した際、男爵邸の使用人に、あれこれ尋ねたのですが……」
アルベール様は、身を乗り出された。
「使用人によると、バール男爵は定期的に、夜ふらりと出かけることがあったそうです。その際は供は連れずに、必ず一人で行動したとか。何だか、怪しい予感がしますね」
「女性に会いに行ってらしたのでは、ございませんの?」
「俺も、最初はそう思いました。ですが、その際の服装や雰囲気などから、そうではないと思うと使用人は断言していました。さらに、もう一つ。男爵はいつも、胸ポケットに黒い手帳を所持していたそうなのです。そしてそれは、誰にも絶対に触らせることが無かったとか。……しかし」
アルベール様は、意味ありげに笑った。
「俺が、物盗りの犯行に見せかけるため男爵の所持品を漁った時、胸ポケットも見ましたが……。彼は、手帳なんて持っていませんでした」
「じゃあ……」
「真犯人が奪ったのでしょう。そしておそらく、それが殺害目的」
「一体、何なのかしら?」
少しずつ真相に近付いてきた気がして、私は胸が高鳴るのを感じた。
「わかりません。ただ、あれだけの財を成した男だ。陰で、怪しい商売に手を染めていた可能性は大きいですね。外出はその件で、手帳にはそのことが綴られていたのかも……」
「じゃあシモーヌ夫人は、巻き添えを食っただけなのかしら?」
「かもしれませんね。あんな男と逢い引きしていたのが運の尽きだった、と」
アルベール様が、吐き捨てるように答えられる。その口調は必要以上に冷たい気がして、私は戸惑った。そこで思い出したのは、ドニ殿下のお言葉だった。
――アルベール殿は、あなたがいなくなられるよりずっと前から、パーティー会場にはいらっしゃらなかったのですが……。
私は、思い切って口を開いた。
「アルベール様。一つ、お聞きしたいことがございます」
「何です?」
怪訝そうに、アルベール様が首をかしげる。私は、彼の漆黒の瞳をじっと見つめた。
「あの晩、アルベール様はなぜ、私が倒れていた所……犯行現場の部屋の前に、いらっしゃったのですか」
一瞬、アルベール様が沈黙される。
アルベール様は、身を乗り出された。
「使用人によると、バール男爵は定期的に、夜ふらりと出かけることがあったそうです。その際は供は連れずに、必ず一人で行動したとか。何だか、怪しい予感がしますね」
「女性に会いに行ってらしたのでは、ございませんの?」
「俺も、最初はそう思いました。ですが、その際の服装や雰囲気などから、そうではないと思うと使用人は断言していました。さらに、もう一つ。男爵はいつも、胸ポケットに黒い手帳を所持していたそうなのです。そしてそれは、誰にも絶対に触らせることが無かったとか。……しかし」
アルベール様は、意味ありげに笑った。
「俺が、物盗りの犯行に見せかけるため男爵の所持品を漁った時、胸ポケットも見ましたが……。彼は、手帳なんて持っていませんでした」
「じゃあ……」
「真犯人が奪ったのでしょう。そしておそらく、それが殺害目的」
「一体、何なのかしら?」
少しずつ真相に近付いてきた気がして、私は胸が高鳴るのを感じた。
「わかりません。ただ、あれだけの財を成した男だ。陰で、怪しい商売に手を染めていた可能性は大きいですね。外出はその件で、手帳にはそのことが綴られていたのかも……」
「じゃあシモーヌ夫人は、巻き添えを食っただけなのかしら?」
「かもしれませんね。あんな男と逢い引きしていたのが運の尽きだった、と」
アルベール様が、吐き捨てるように答えられる。その口調は必要以上に冷たい気がして、私は戸惑った。そこで思い出したのは、ドニ殿下のお言葉だった。
――アルベール殿は、あなたがいなくなられるよりずっと前から、パーティー会場にはいらっしゃらなかったのですが……。
私は、思い切って口を開いた。
「アルベール様。一つ、お聞きしたいことがございます」
「何です?」
怪訝そうに、アルベール様が首をかしげる。私は、彼の漆黒の瞳をじっと見つめた。
「あの晩、アルベール様はなぜ、私が倒れていた所……犯行現場の部屋の前に、いらっしゃったのですか」
一瞬、アルベール様が沈黙される。