転生したら伯爵令嬢でした（ただし婚約者殺しの嫌疑付き）。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます！

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　悶々としていると、コレットが不意に言った。



「気になります？　アルベールの出生のこと」

「ええ!?　いえ……」

「アルベールの実のお母様は、ミレー家と縁深い伯爵家のお嬢様だったのです」



　コレットは、唐突に語り始めた。



「でも、アルベールを出産されて、すぐに亡くなられて。不憫に思ったミレー公爵ご夫妻が、彼を引き取られたのです。そして、実子としてお育てになりました」

「そうだったのね……」



　ローズは、ミレー公爵は遠縁の子供を引き取ったと仰っている、と言っていた。それは本当だったのか。



「ところが口さがない者たちが、アルベールは公爵が愛人に産ませた子では、などというあらぬ噂を立てました。アルベール本人がそんな話を耳にしたら傷つくだろうと判断されたご夫妻は、彼が幼いうちに、真実を打ち明けられました。だから彼は、両親と血が繋がっていない事実を、早い段階から知ることになったのです」



　両親にどこかしら気を遣ってきた、というアルベール様の言葉が蘇る。無責任な噂を流した人々に、私は腹が立って仕方なかった。



「ミレーご夫妻は、アルベールが傷つかないようにと、たいそう気を遣われました。私は、アルベールの実のお母様の妹の娘なのですが、彼らに招かれて、幼い頃からミレー家へよく出入りさせていただきました。年が近いので、遊び相手にと思われたようです」



　道理で親しいわけだ、と私は納得した。コレットが、やや決まり悪そうに笑う。



「公爵家のご子息を呼び捨てなんて、いけないことなのですけれど。つい、小さい頃の癖が抜けなくて」



　そこで私は、ふと疑問を覚えた。アルベール様は、ご自分のことをみなしごだったと仰っていたが……。



「アルベール様の実のお父様も、早くに亡くなられたのかしら？」

「――はい」



　一瞬間を置いて、コレットが頷く。もしかして、不幸な亡くなり方をされたのだろうか、と私は思った。だとしたら詮索するべきではないだろう、と私はそれ以上の質問を控えた。コレットが、やや言い訳がましく言う。



「アルベール本人が話さないのに、勝手に喋るなんてよくないというのは、わかっているんですけどね……。でも」



　彼女は、私を見つめて微笑んだ。



「モニク様には、本当のことを知っていただきたかったんです……。モニク様は、アルベールにとって、特別な女性だと思っていますから」