転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

15

「――お前は、何を言ってるんだ!」



 一瞬絶句した後、アルベール様は怒鳴った。



「探偵ごっこのつもりか? これは、本物の殺人事件なんだぞ? そんなこと、手伝わせられるわけないだろう!」

「そうよ、危ないわ」



 アルベール様に同調しながら、私は慌ただしく記憶をたどっていた。この部屋に入ってから、私たちの仲が偽装だとバレるような会話は、交わしていない。取りあえず、そのことに安堵する。



「僕、行動力には自信がありますよ。それに、子供だからこそできることって、あると思うんです」



 めげもせずに、エミールが言う。



「だとしても、ダメだ」

「へええ。あくまで僕を、仲間はずれになさるおつもりですか?」



 エミールが、目をつり上げる。



「だったら僕、父様と母様に、こう申し上げますよ。アルベール兄様は、モニク様と部屋に入られてからというもの、殺人事件など無粋な話題ばかりなさって、モニク様を退屈させましたよーって」

「お前……」



 アルベール様が、エミールをにらみつける。



「父様も母様も、がっかりなさるだろうなあ。女っ気の無かった兄様に、やっと素敵な女性が現れたというのに、おじゃんになったりしたら。特に母様は、モニク様がお気に入りだというのにねー」



 それ以上見ていられず、私はお二人の間に割って入った。



「ねえ、アルベール様。少しくらいなら、手伝ってもらってもよいのじゃないかしら? 人手は、多い方がいいと思いますし」

「やっぱり、モニク様はお優しいなあ! 義姉様ってお呼びしてもいいですか?」



 エミールが、すかさずそう言い出す。アルベール様は、苦虫をかみつぶしたような顔をなさった。



「仕方ないな。どのみち、話は聞かれてしまったし……。だがエミール、決して危ない真似はするなよ?」

「了解!」



 エミールが、パッと顔を輝かせる。アルベール様は、仕方なさげに、書類を広げ始めたのだった。
< 63 / 228 >

この作品をシェア

pagetop