転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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「……殿下?」

「ああ、これは失礼。あまりに雰囲気が変わられたので、驚きましてね。とても、お似合いですよ」



 ドニ殿下は、私の髪型やドレスを、まじまじとご覧になった。使用人たちは気を遣ったのか、挨拶して去って行った。



「お見えになっているとは存じませんで……。ずいぶんお待ちでしたの?」

「いきなり伺ったのはこちらですから、気になさらないでください。それに、待っている間、改めてトピアリーを鑑賞していたのですよ。前回は、それどころではありませんでしたし」



 興味深げにトピアリーを見やってから、ドニ殿下は私の方を向き直られた。



「ところで。使用人たちから聞いたのですが。今日あなたは、ミレー家へ行かれていたとか?」

「――ええ」



 警戒しつつお答えすると、殿下は眉をひそめられた。



「アルベール殿は、ずいぶん中途半端な真似をなさるのですね。婚約は保留にしつつ、屋敷へ招待するなんて。まるで、あなたを振り回しているようだ」

「保留と言い出したのは、こちらの両親ですから。……ところで殿下、今日はどのようなご用件ですの?」



 無理やり話題をそらしたものの、殿下のお言葉は、私の胸に刺さった。ご家族に紹介していただき、しかもお母様に気に入られて、私の胸には少し欲が芽生えてしまった。とはいえ、この恋愛関係はあくまで偽装だ。それを、肝に銘じておかねば……。



「アルベール殿とは同じ立ち位置だ、と申し上げたでしょう? 辛抱強くここへ通って、あなたのお気持ちが変わるのを、待つつもりです」

「殿下。私がお慕いしているのは、アルベール様だと……」



 拒絶の言葉を続けようとした、その時だった。私は、目を見張った。ドニ殿下は、懐から何かを取り出されたのだ。それは、あのエメラルドのブローチだった。



「殿下、これは……!?」

「モンタギュー殿から、取り戻して参りましたよ」



 ドニ殿下は、うやうやしくブローチを差し出された。
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