転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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「男性、ですか」



 私は、繰り返した。ええ、と侯爵が頷かれる。



「そしてその男は、バール男爵とシモーヌ夫人殺害の犯人でもある、と我々はにらんでいます」

「しかし、アンバーと彼らに、何の接点があるというのです?」



 ドニ殿下が、眉をひそめられる。



「彼女が殺されたのは、単なる痴情のもつれかもしれないではありませんか」

「はい。確かにアンバーには、交際している男性がいたようですな」



 侯爵は、あっさりと仰った。



「恐らく真犯人はその男で、アンバーは彼に協力しており、口封じで殺された、というのが我々の見解です」



 アルベール様は、最初からそうにらまれていたな、と私は思い出した。モンタギュー侯爵は、さらに続けられた。



「他の侍女たちに話を聞いたところ、アンバーは時折夜に抜け出しては、男性物の香水の匂いをさせて帰って来たとか。さらに、他の侍女が自分の恋人について語った際に、アンバーはこう言ったことがあるそうです。私の彼は、比べものにならないくらい立派な方なのよ、と……」

「大げさに言ったのでは? 女性は自分の恋人について、とかく見栄を張りがちですからねえ」



 ドニ殿下が、苦笑される。



「そのアンバーという娘は、信用できない言動をする、とモニク嬢も仰っていたではありませんか。それに、そんな娘と付き合うような男性が、大した人物とも思えませんが。同じような類の男ではないのですか?」

「そんな風に仰らなくても」



 私は、少しむっとした。確かに嫌な面もあったけれど、幼い頃からずっと一緒だった娘だ。殺されたと聞いた今、必要以上に彼女を貶めて欲しくなかった。



「真面目な娘でしたがねえ」



 同じように思われたのか、お父様もおそるおそる口を挟まれる。



「まだ、信じられません……。私も、アンバーを信用していたのですよ。モニクがバール男爵に嫁ぐ際は、付いて行かせようとしていたくらいです」

「ええ? そうなのですか?」



 私は、思わず聞き返していた。忘れもしない、あの殺人のあった夜。私の悪口を言い立てる中で、アンバーはこう言っていたではないか。



 ――どうせもう、モニク様とはお別れだもの……。

 ――モニク様との付き合いはもう終わりなんだから……。



 あの時は、私が嫁いでサリアン邸を出るから、という意味だと思っていた。お父様のお言葉が本当なら、その解釈は間違っていたことになる。



「お父様、その話は、アンバー本人も承知していましたの? バール男爵家へ、共に行かせることです」

「ああ、そうだが? 喜んでお供します、と言っていた」



 お父様が、怪訝そうにされる。私は、モンタギュー侯爵の方を向き直った。



「モンタギュー様。実は婚約披露パーティーの夜、死体が発見される前、アンバーはこう申していたのです。『モニク様とはお別れ』『モニク様との付き合いはもう終わり』と。私の婚約者が殺されることを、知っていたとは思われませんか?」
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