転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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「――何と」



 モンタギュー侯爵が、目を見張られる。ドニ殿下とお父様も同様だ。



「それに。ここを辞めて出て行く前、アンバーは他の侍女たちに言っていたそうですわ。私はもうすぐ、あなたたちの手の届かない所へ行くわよ、と……」

「ありがとう。これで、確信が持てました」



 侯爵は、大きく頷かれた。



「『手の届かない所へ行く』というのは、きっと、その交際相手の男と一緒になる、という意味でしょうな」

「では、モニクの容疑は晴れたということで?」



 お父様が、勢い込んで尋ねる。侯爵は、ええと答えられた。



「森番の証言を得た時から、モニク嬢への疑惑はほぼ消えていました。パーティーの夜のアリバイも、おありですし……。だからこそ、ブローチをお返しすることに決めたのです。こちらへお届けに上がるつもりでしたが、ドニ殿下が渡してくださる、と仰るのでお言葉に甘えました」



 私は、思わず殿下のお顔を見た。先ほど彼は、『侯爵を説得し』て取り戻したと仰らなかったか。ずいぶん、ニュアンスが違うような……。



「そんな目でご覧にならないでください」



 私の考えていることを見抜かれたのか、殿下は肩をすくめられた。



「アルベール殿にあれこれ持って行かれているので、少しはいい所を見せたかったのですよ」



 私は、黙り込んだ。怒るほどのことではないが、何だか釈然としなかったのだ。



(アルベール様なら、きっと、黙って陰で行動されたわね……)



 こんな状況なのに、私はつい、アルベール様に思いを馳せてしまった。それを中断させたのは、モンタギュー侯爵だった。



「モニク嬢。念のため、最後に一つお伺いしたいのですが。森番が不審な男を目撃した三日前の晩、あなたはどこで何をされていました?」

「モンタギュー様! 先ほど、容疑は晴れたと……」



 お父様は気色ばまれたが、私は彼を制した。ちょうどいいことに、アルベール様が、私の部屋へいらした夜ではないか。



「いいんですのよ、お答えします。私は、自室におりました。アルベール様とご一緒でしたが」

「――モニク」



 とがめるような声を上げるお父様を、私はにらみつけた。



「ローズならよくて、私はいけないんですの? 門番は、アルベール様をローズのお部屋へご案内しようとしたそうですわ。男性を夜に招くことに、彼女は慣れているのだとか。……まあとにかく、アルベール様と門番が証言してくれますわよ」
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