転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

11

 私は、ぎょっとしてモーリスを見つめた。バレていたのか。一体、いつから……?



「パーティーの翌朝、ブローチの話をした際、お嬢様は様子が変でした」



 モーリスは、静かに言った。



「いくら殺人事件が起きて混乱されているとはいえ、大切なお母様の思い出話をお忘れになるなんて、妙だと思っていたのですよ。どうか、一人で抱え込まれないで、打ち明けてくださいませんか。このモーリス、お嬢様のためなら、何なりと協力いたします」



 彼の瞳は、何もかもお見通しのようだった。覚悟を決めるか、と私は思った。本を見られた以上、嘘はつき通せない気がした。それに、アルベール様とコレットにはすでに打ち明けた話である。



「……そうよ」



 私は、頷いた。



「パーティーの朝からの記憶が、ぷつりと途絶えているの……。でも、それを言ったら、犯人だと思われそうで。ずっと言えずにいたわ」

「お嬢様……」



 モーリスは、辛そうに顔をゆがめると、幼子にするように私を抱きしめてくれた。



「きっと、ショックが大きすぎたのでしょうな……。おかわいそうに」



 驚いたことに、モーリスは目頭をぬぐった。



「アルベール様は、このことをご存じなので?」

「ええと、実は……」



 説明しかけて、ここではまずいな、と私は思い直した。



「人に聞かれたくないわ。今から、部屋に来てもらえる?」

「もちろんでございます」



 モーリスを自室へ連れて行くと、私は改めて、パーティーの日の話をした。



「……というわけで、気が付いたら部屋の前で倒れていたのよ。でも、正直にそんなことを言えば、怪しすぎるでしょう? それで、ずっと嘘をついていたの。アルベール様は、全てを知った上で、アリバイ作りに協力してくださったのよ」

「そうでございましたか」



 モーリスは、深刻に頷いた。



「お嬢様が、人殺しなどなさるはずがありません。きっと全ては、真犯人の策略でございましょう……。それにしても、アルベール様は素晴らしい方ですな。それほど、お嬢様を愛してらっしゃるのでしょう」

「……そうかしら。きっと、私を気の毒に思っただけよ……。結婚だって、されるつもりは無いそうだし」



 モーリスに余計な期待をさせまいと、そう言ったのだが、彼は首をかしげた。



「そうでしょうか。アルベール様は、モニクお嬢様を愛しておいでだと思いますが。彼の、お嬢様を見つめる眼差しを見ればわかりますよ」
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