転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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「……はい?」



 私は、ドキリとして身構えた。



「改めて、申し込みに伺おうと思います。ただそれは、事件が解決してからにしようと考えています。新たな目撃証言のせいで、今度は俺に疑いの目を向ける人もいますから。サリアン伯爵の元へ堂々と伺うためには、まずはその嫌疑を、完全に晴らしたいのです」

「男性……という証言でしたものね。しかも森番は、黒髪の男と言っていますし」



 アルベール様が逮捕されたりしたら、と私は怯えたが、彼は余裕の笑みを浮かべていた。



「大丈夫ですよ。モンタギュー侯爵は、馬鹿ではありません。ガストンという門番の態度は、不自然だと考えているようです。森番についても、そうです。最初は、いくら問い詰めても、目撃した男のことを覚えていない様子だったのに、途中から一転して『黒髪』を強調し始めた。恐らくは、誰かにそう言わされていると、侯爵はにらんでいます」



 ややほっとしたものの、私はまだ不安だった。



「……それなら、よいのですけれど。でも、もしや犯人は、今度はアルベール様に濡れ衣を着せようとしているのかしら?」

「でしょうね」



 アルベール様は、他人事のように仰った。



「あなたに罪を着せることが難しくなって、俺に矛先を変えたのでしょう……。ま、おめおめと犯人になど、させられるつもりはありませんが。ひとまずは、エミールからの報告を待ちましょう……」



 その時、ノックの音がした。執事だった。手紙を携えている。



「坊ちゃま。ティリナのエミール様から、お便りです」

「噂をすれば、だな」



 アルベール様は、にこりと微笑むと、手紙を受け取った。
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