イケメンは好きだけど近づかないでください!



『そろそろ楽しくなってきた』

「ついにイカレたか」

『ワンパターンでつい。でもそろそろ寒い時期だし
風邪ひくかもしれないねー』

「メンタル強すぎか」



せっかく昼間に着替えたのに

放課後にもかけられるとは



「ジャージいる?」

『いや、流石に私には小さいかな』



澪は私より小さい

だから着れば丈が足りなくてダサくなる



『もう帰るだけだしいいよ』

「俺の貸してやろうか?」



後ろから声をかけられ振り向く



『おお、今日すごい水瀬くんと話してる』

「別に今までも話してはいただろ、ほら」



差し出されたのは水瀬くんのジャージ



『あぁいいって、帰るだけだもん』

「流石にそんなにびしょ濡れで帰ったら
通り過ぎる人たちの注目の的になんぞ」

『ヴッ…確かにごもっとも…
あ、でもなんか部活入ってなかったっけ?』

「今日は顧問が出張で休みっつか自由参加だし」



それに学校のジャージとは別に

部室にジャージあるし気にすんな。



『男前過ぎてビビった』



それなら有難くお借りしまーす!と伝えれば

じゃあまた明日なーと手を振って教室を出て行った



「水瀬くん、思ったより気さくなんだね」

『ね!私も今日それ思ったよ』

「あっ、やば!私も急いでたんだった!
ごめん行くね!また明日ー!」

『はーい!ばいばーい!』



最近なんだか澪はそそくさと帰っていく

先輩たちは部活引退しちゃったし

…新たなイケメンを発見したか彼氏でもできたな…?


校内が静まりかえり彼方此方から掛け声が聞こえたり

吹奏楽の楽器の音が聞こえ始めたころに着替え

私も昇降口へと向かう



「あ、久しぶりの優ちゃんじゃん」

『確かになんだかお久しぶりですね』

「もうすぐ入試だかんなー
構ってやれなくてごめんなー?」



寂しくないか?とウルウルした目で見てくる



『ワースッゴクサミシーナーアハハ』

「わかりやすい棒読みすんな」

『あははっ』



特に連絡を頻繁に取ったりもしないし

先輩が会いに来なければ会う機会はない

きっと私が会いに行けば話せるけど

そんな敵の巣窟に自ら行く気はない

だから、会えたのがちょっと…

いや、すごく嬉しかったり



「ん?なんでジャージなんだよ、
つか会うたびにちょんまげにしてんのな」



ブームか?と聞かれる

ちょんまげなんてできればしたくないんだよ



『ちょっと通り雨が…』

「…」

『…そんな見られたら浄化して消えそうです』

「…おまえって、苗字なんだっけ」



いつもなら私の発言にツッコんでくれるのに

何故か苗字を聞かれた、なんで



『小鳥遊ですけど…?』

「…」

『せんぱーい?』

「なんでもね、途中まで一緒に帰ろうぜー」

『…はい!』



少し躊躇ったけど

もうなにしたっていじめられるんだ

開き直ってやろう


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